ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #39
FABRIC TOKYOの成長と失敗。オーダメイドスーツのD2Cは、なぜ成功したのか
オーダーメイドスーツなどをD2Cブランドとして提供するFABRIC TOKYO(ファブリックトウキョウ)。店舗でサイズを測定した後に、スマートフォンからスーツを注文できるというユニークなビジネスモデルで成長している。前回に続いて、代表取締役の森雄一郎氏になぜ店舗を持つビジネスモデルを選んだのか、そして社内のカルチャーをどうつくっているのか話を聞いた。
FABRIC TOKYOを起業した理由
田岡 森さんがFABRIC TOKYOでオーダーメイドスーツのビジネスを始めたのは、何がきっかけだったのでしょうか。
森雄一郎
FABRIC TOKYO 代表取締役CEO1986年生まれ岡山県出身。大学卒業後、ファッションイベントプロデュース会社「ドラムカン」にてファッションショー、イベント企画・プロデュースに従事。その後、ベンチャー業界へ転向し、不動産ベンチャー「ソーシャルアパートメント」創業期に参画したほか、フリマアプリ「メルカリ」の立ち上げを経て、2014年2月、カスタムオーダーのビジネスウェアブランド「FABRIC TOKYO(旧・LaFabric)」をリリース。”Fit Your Life”をコンセプトに、顧客一人一人の体型に合う1着だけではなく、一人一人のライフスタイルに合う1着の提供に挑戦中。
FABRIC TOKYO 代表取締役CEO1986年生まれ岡山県出身。大学卒業後、ファッションイベントプロデュース会社「ドラムカン」にてファッションショー、イベント企画・プロデュースに従事。その後、ベンチャー業界へ転向し、不動産ベンチャー「ソーシャルアパートメント」創業期に参画したほか、フリマアプリ「メルカリ」の立ち上げを経て、2014年2月、カスタムオーダーのビジネスウェアブランド「FABRIC TOKYO(旧・LaFabric)」をリリース。”Fit Your Life”をコンセプトに、顧客一人一人の体型に合う1着だけではなく、一人一人のライフスタイルに合う1着の提供に挑戦中。
森 まずは、先ほどお話ししたように、ファッションが大好きだったこと。そしてIT小僧でもあったこと。もうひとつは、私は腕が長い体型なので既製品が合わず、洋服が好きなのに似合うスーツがないという悩みを持っていたことでした。
不動産ベンチャーの営業として働いていたときに初めてオーダーメイドスーツをつくり、その快適さに感動したんです。それでオーダーメイドスーツがもっと流行ればいいと思ったものの、あまり普及していないので、その理由を調べると旧態依然としたファッション業界の構造、製造工程の複雑さという商品の課題などソリューションに問題があることが分かりました。
つまり、ニーズは大きいのにソリューションが悪いというギャップがあったんです。それを埋めるサービスをつくれば、流行るかもしれないと思ってFABRIC TOKYOを始めました。
田岡 FABRIC TOKYOは実店舗を持って、そこで採寸などを行ってからスマートフォンからオーダーできる仕組みを採用していますが、店舗の出店は最初から構想していたのですか。
田岡敬氏
エトヴォス 取締役 COOリクルート、ポケモン 法務部長(Pokemon USA, Inc. SVP)、マッキンゼー、ナチュラルローソン 執行役員、IMJ 常務執行役員、JIMOS(化粧品通販会社)代表取締役社長を経て、ニトリホールディングス 上席執行役員。2019年1月21日より、エトヴォス 取締役 COO。
エトヴォス 取締役 COOリクルート、ポケモン 法務部長(Pokemon USA, Inc. SVP)、マッキンゼー、ナチュラルローソン 執行役員、IMJ 常務執行役員、JIMOS(化粧品通販会社)代表取締役社長を経て、ニトリホールディングス 上席執行役員。2019年1月21日より、エトヴォス 取締役 COO。
森 はい、最初の事業計画から入っていました。採寸したり生地を確認したり、そうした作業をしたことがないお客さまに経験してもらうことは、大変で労力やコストがかかります。ZOZOスーツのような3Dスキャンなどテクノロジー技術が以前からあるのに、なかなかオーダーメイドが普及しないのは、家で自分でサイズを測るというユーザー体験が普段の買い物体験から逸脱しているからだと考えました。なので、まずは店舗に行って服を買うという体験と同質化させるために、店舗での採寸は不可欠だと考えました。
田岡 店舗をつくったのは、いつですか。
森 起業から2年目でした。1年目はお客さまに自分でサイズを測ってもらってサイトに入力してもらうスタイルでした。ところが、「オフィスに行くので測ってもらいたい」という人がすごく多かったんです。そこで試しに予約制にしてオフィスで採寸したところ、結果的にECサイトのCVRが上がりました。
次に、ポップアップストアをオープンすると同様にCVRが上がったので、店舗をつくると顧客の期待に応えられるソリューションが提供できると実感して、本格的にリアル店舗戦略を動かし始めました。
田岡 店舗にかかるコストとCVRの差分でROIが合うと、きちんとシミュレーションしたのですか。
森 はい、計算しました。今思えば、まだ精度は低かったと思いますが、店舗を経験した顧客はオンラインだけで完結する顧客に比べてリピート率が2倍、さらに単価も2倍に伸びていました。
田岡 リピート率だけでなく単価も伸びたのは、なぜですか。
森 値段が高く質のいい生地を選びやすいという理由もありますし、店員に勧められたチノパンやシャツなどの併売も増えたんです。店舗を出すことで、アップセルとクロスセルの両方がワークしました。
田岡 なるほど。現在は16店舗だと思いますが、今後は何店舗まで増やすんですか。
森 私たちはデジタルドリブンで出店計画をつくっていて、アクセスデータや会員データなどを統合して検証することで、確実にニーズがあると考えられる出店場所を導き出すことができます。2020年9月末を目処に、国内では30店舗まで出店する掲載を発表しています。
田岡 すでに計算されているなんて素晴らしいですね。顧客のベースが増えたら、もっと店舗数が増える可能性もありますか。
森 そうですね。もっとFABRIC TOKYOが有名になって、商品が欲しいという人が増えれば、出店エリアは拡大していくと思います。