ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #40

「このままでは米国のD2Cユニコーンに日本市場が奪われてしまう」FABRIC TOKYO 森雄一郎

前回の記事:
FABRIC TOKYOの成長と失敗。オーダメイドスーツのD2Cは、なぜ成功したのか
 オーダーメイドスーツなどをD2Cブランドとして提供するFABRIC TOKYO(ファブリックトウキョウ)。店舗でサイズを測定した後に、スマートフォンからスーツを注文できるというユニークなビジネスモデルで成長している。最終回となる第3回は、代表取締役の森雄一郎氏にD2Cというビジネスモデルに注目している背景、今後のビジョンについて聞いた。
 

日本はDtoC分野の成長が遅い


田岡 森さんは、さまざまなカンファレンスやメディアで積極的にD2Cについて解説されていますが、何か理由があるのですか。

森 自分たちでつくった商品を自分たちで販売するというD2Cのモデルが商売の本質に近いと感じていて、私はすごく好きなんです。いずれあらゆる商品がD2C化していくとも考えています。

ところが、日本ではD2Cへの理解が進んでおらず、成長が異常に遅いのです。私は5年ほどD2C事業を運営していますが、事業者も投資家も銀行もまだまだ理解が追い付いていないと感じています。

それゆえ資金調達には非常に苦労しました。今は順風満帆に見えるかもしれませんが、当時は死に物狂いでプレゼンテーションしていました。
森雄一郎
FABRIC TOKYO 代表取締役CEO
1986年生まれ岡山県出身。大学卒業後、ファッションイベントプロデュース会社「ドラムカン」にてファッションショー、イベント企画・プロデュースに従事。その後、ベンチャー業界へ転向し、不動産ベンチャー「ソーシャルアパートメント」創業期に参画したほか、フリマアプリ「メルカリ」の立ち上げを経て、2014年2月、カスタムオーダーのビジネスウェアブランド「FABRIC TOKYO(旧・LaFabric)」をリリース。”Fit Your Life”をコンセプトに、顧客一人一人の体型に合う1着だけではなく、一人一人のライフスタイルに合う1着の提供に挑戦中。

田岡 まだまだD2Cの可能性が知られていないわけですね。

森 はい。現在、D2C領域では米国と中国が先行し、ユニコーン企業が多数生まれています。米国のユニコーン企業はじきにグローバル展開を進め、日本にも進出してくるでしょう。そうすると、日本のD2Cは遅れているので、どんどん海外サービスが立ち上がっていってしまう。

参考:森雄一郎氏ブログ
D2C事業に関する関係者向け資料「なぜやる?どうやる?進撃のD2Cスタートアップ(2019年版)」を一般公開しました

田岡 
つまり、日本のさまざまな市場が米国のD2Cサービスに奪われてしまう。

森 その通りです。日本は人口減少によって、国内の経済成長は見込めません。それならば、可能性のあるD2Cサービスで外に稼ぎに行く必要があります。僕は大学時代から海外に何度も行っているので、自分たちがつくったものを世界で使ってもらえることが夢なんです。そうした危機意識もあって、D2Cの啓蒙活動を行っています。

田岡 
では、FABRIC TOKYOも海外展開されるのですか。
田岡敬氏
エトヴォス 取締役 COO
リクルート、ポケモン 法務部長(Pokemon USA, Inc. SVP)、マッキンゼー、ナチュラルローソン 執行役員、IMJ 常務執行役員、JIMOS(化粧品通販会社)代表取締役社長を経て、ニトリホールディングス 上席執行役員。2019年1月21日より、エトヴォス 取締役 COO。

森 もちろんです。1年以内には実行しようと考えています。

田岡 森さんは海外情報のキャッチアップが早い印象がありますが、どこから入手しているのですか。

森 学生時代にファッションの Webメディアを運営していた経験もあるので、英語のWebメディアを日頃からリサーチしているんです。あとは、現地に行ってD2Cのクリエイティブディレクターとお茶したりして、情報を得るようにしています。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録