ドラクエ的マーケターキャリア調合術 ― スキルセット×マインドセット、それとちょっぴりの「運」 #01
「納得できる」マーケターのキャリア形成は、ロールプレイングゲームに似ている
ビジネス目標達成とキャリア形成、その共通点と相違点
最初に結論じみたことを言ってしまえば、自身が納得感を持てるようなキャリア形成に必要なのは、「ゴール設定」と「プロセス設計」です。これは普段、皆さんが取り組んでいるビジネスの課題や中期営業目標などの達成と何ら変わりはありません。自分が何を仕事・生業としてやりたいのかを見つけ、そしてその目標達成のために必要なスキルや経験を具体的なプロセスとして積み重ねていくことによってのみ、振り返ったときに、または足元を見つめたときに、自らのスキルで社会(または他者)へ何かしらの貢献ができているという充足感が生まれるのです。
ただ、キャリア形成がビジネス目標と違う点が2つあります。「ゴール設定」が最初から明確でない場合があること、そしてその「プロセス」が外部の影響を強く受ける、という点です。
これは、このコラムの表題にあるように、ロールプレイングゲーム(RPG)にとてもよく似ています。どこかの村で目覚め、周りの環境や会話を通じて自分自身を見つめ直し、外へ目が向き、旅に出ることになる。旅の過程では仲間と出会い、たくさんのチャレンジを通じて自分を磨き、そして必要なスキルや装備・道具、呪文や必殺技などを身につけていく。その過程で自らが目指すものが段々とはっきりしてくることで、達成するために“転職”でスキルやマインドセットを追加することもある……。
最初は見えなかった物語が、旅を続けることによってその姿を現し、自分自身がその主人公となって物語をつくっていく、というゴールとプロセスです(美しい表現をすれば、ですが)。
物語を始める、世界を知る
ビジネスの世界では、明確な目標やKPIが設定されていることが大前提です。しかし、このキャリア形成の旅においては、最初は全体像や目指すゴールがよく見えない、わからない、というのがポイントです。私自身のキャリアを振り返ると、学生時代から何となく広告やクリエイティブといったマーケティングコミュニケーションに興味はありましたが、新卒で入社した国内電機メーカーで配属されたのは国際物流と生産管理進捗でした(もちろん、この経験は旅の始まりとして後々、とても活きてくることになります)。
マーケティングという概念とその知識習得に独学で努めてはいたものの、自分が何をやりたいのか、そのために何が必要なのかについてはとても「ぼんやり」としていました。
“育った村”の中で仲間と仕事をしている分にはそれなりの充実感もありましたが、なかなか社内で目指すようなマーケティング関連業務に就けない現状から、このままこの“村”で過ごすことに焦りを感じるようになっていました。
そんな中、与えられないなら自らで掴みにいこう、と決めて“村”を飛び出し、知り合いを通じて小さなベンチャー企業へ転職することになります。
現代の特に若いビジネスパーソンは、学生時代から専門分野の研鑽を積み、インターンなどで経験を得て、明確な目標を持って入社される方も多いでしょう。私のように社会人になってから始めるのとでは大きな違いがあります。
ただ、この「小さくとも次の目標を設定し、そのために必要なアクションを起こす」というのはいつから始めても構わないし、むしろ現代のマーケターキャリア形成においては、常にこの「目標」が変更・修正・新規追加されることに意義があるとも言えると思います。