ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #番外編02

「日本のマーケターも捨てたもんじゃない」 成長に必要なのは、知識の獲得

「人間を見る」がマーケターの核の能力


田岡 現状を把握したり、目的をブレイクダウンしたりするための調査も必要になりますよね。それはスキル的に問題ないですか。

音部 
そこは、ひとつはリサーチ部門やリサーチエージェンシーといった、内部または外部のプロフェッショナルに依存すればいいと思います。日常的に調査結果を見る仕事をしている人は、結果をそのまま鵜呑みにするのではなく、人間を見ることが大切です。

消費者も生活者も本義的には、人間なんです。講演で聴衆に「液体洗剤の調査で、70%の消費者が1本当たりの単価ではなく、1ミリリットル当たりの単価で購入商品を選ぶという結果が出たけど、あなたならどうする?」と問うのですが、それに対し大体の方が「値段を変えずに容量を増やす」と答えます。

でも、追加で「液体洗剤を1ミリリットル当たりの単価で比べて買っている人」と聞くと、実際に手を挙げるのはひとりか2人しかいないんです。このリアリティーが実は見えてないんですよ。



聞き方も悪いんですよ。「あなたは、液体洗剤を買うときに1本当たりの単価を見ていますか、それとも1ミリリットル当たりの単価を見ていますか」という質問なのですが、これは相手には「あなたは1本当たりの単価でころっと騙される簡単な消費者ですか、それとも1ミリリットル当たりの単価まで見ている賢い消費者ですか」と聞こえているんです。

後者を選んだ7割の人は、「もちろん賢いですよ」と答えたに過ぎない。だから、このデータは無視しなければならないんです。

こうしたことに質問票を見たときに気づける人もいますが、我われはリサーチの専門家ではないので、気づけない人も多い。ただ、結果を見たときに、これはおかしいと思えるかどうかは、人間をどこまできちんと認識できているかではないでしょうか。

「人間を見る」、これはもう非常に重要です。

田岡 やはり、「人間を見る」がマーケターに求められる最もコアなスキルでしょうか。

音部 
はい、最も重要な構成要素のひとつだと思います。

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