ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #番外編01
マーケターの必須スキル 「事象を抽象化して、概念化する力」は、どうすれば身に付く?
音部流 「視点を増やすための方法」
田岡 私もマッキンゼーのときに会社から「フレームワークを考えなさい」と言われて同じことをしていました。これはすごく重要なスキルだと思うのですが、どうすれば身に付きますか。
音部 それは、つまるところ視点をどう増やすかという話なので、いくつか方法はあるんです。ざっと挙げると3つあります。
ひとつ目は、いろいろな学問領域のフィルターを通すこと。マーケティングや経営だけではなく、会計や科学など、多数の学問領域のフィルターを通して対象物を見ることです。
物事の本質が見えないのは、どうしてもバイアスがかかっているから。でも、バイアスは自分で分からないから外せない。それならば、別のバイアスをかければいいんです。
田岡 わざと別の切り口、色々な眼鏡を掛けて対象物を見てみると。
音部 そう。別のバイアスというフィルターを付けて、見えるものを増やす。もしくは、捨象することで、抽象が浮かび上がると言い換えることもできます。
2つ目は、人のコピーをつくること。特に上司をコピーすると、効率がいいんです。例えば、上司に何か提案物を持っていく前に「あの人は、何と言うか」を考えると、同じ視点を持つことができます。
逆に上司の立場であれば、提案を受けるときに「さあ、私は今から何を言うでしょうか」と面倒くさい質問をします(笑)。それを何回か繰り返すと、提出する前に「音部が何を言うか」をみんなで一度レビューするようになるんです。
さらに、そこで私が違う切り口から発言して、そのやり取りを繰り返すと、コピーがより精密になるんです。1~2年もすれば、頭の中に精緻なミニ上司のコピーができるので、自分だけでなく、その人の視点からも考えられるようになります。