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ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #番外編03
「CEOが総理大臣であれば、CMOは幕僚長」キャリアの延長線上の社長に必ずしも賛成できない理由
P&Gはじめ国内外でマーケティングを指揮してきた、クー・マーケティング・カンパニー 代表の音部大輔氏が考えるマーケターに必要なスキルとは何か。早稲田大学 商学学術院教授の守口剛教授の新著『プロフェッショナルマーケター』に収録された記事を、書籍に掲載し切れなかった内容を含めて、アジェンダノート特別編集ロングバージョンとしてお届けします。
書籍『プロフェッショナルマーケター』。今回の対談はじめ、多数のプロフェッショナルマーケターが登場。音部大輔氏、足立光氏、大江弘祥氏、奥谷孝司氏、清水俊明氏のインタビューは田岡氏が担当。
CEOとCMO、それぞれに必要とされる能力
田岡 マーケターはバリューチェーンのすべてを知るべきだという話がありましたが、そうなるとCMO（Chief Marketing Officer・最高マーケティング責任者）とCEO（Chief Executive Officer・最高経営責任者）の違いは何になるのでしょうか。
音部 それは言い方を変えると、「CEOを総理大臣としたきに、CMOは何か」という問いだと思います。私にとってCMOは、幕僚長（ばくりょうちょう）です。CEOが大統領であれば、CMOは参謀総長。人口問題や地方自治などの政策に口を出したり、税金を上げろと提議したりしない。でも、戦いに勝つことに関しては、責任を負うといった感じでしょうか。CMOであれば、マーケティング部門のオペレーションや組織管理、市場競合を含むブランドの対外的な存立や利益、そのための消費者満足などに責任を負うものと考えます。会社全体の人事労務や、取引先の新規開拓、原材料の購買、工場建設の用地買収などを主導することはありません。
CMOの延長線上にCEOを置けという話も聞きますが、私は必ずしも大賛成ではありません。もちろん軍出身の大統領もいるのでひとつのルートだと思いますし、CMOからCEOになった方々もいらっしゃると思いますが、それが常にベストとは限らないと私は考えています。
音部 大輔氏
クー・マーケティング・カンパニー / 代表P&Gジャパン、マーケティング本部に17年間在籍し、ブランドマネジャー、マーケティングディレクターとしてアリエール、ファブリーズ、アテント、パンパースなどのブランドを担当し、市場創造やシェアの回復を実現。のちにUS本社チームでイノベーションの知識開発をマーケティングとして主導。帰国後、ダノンジャパン、ユニリーバ・ジャパン、日産自動車、資生堂など多様な文化背景、製品分野で、複数ブランド群を成長させるブランドマネジメント、組織構築、人材育成を指揮。2018年より現職。博士（経営学 神戸大学）。
クー・マーケティング・カンパニー / 代表P&Gジャパン、マーケティング本部に17年間在籍し、ブランドマネジャー、マーケティングディレクターとしてアリエール、ファブリーズ、アテント、パンパースなどのブランドを担当し、市場創造やシェアの回復を実現。のちにUS本社チームでイノベーションの知識開発をマーケティングとして主導。帰国後、ダノンジャパン、ユニリーバ・ジャパン、日産自動車、資生堂など多様な文化背景、製品分野で、複数ブランド群を成長させるブランドマネジメント、組織構築、人材育成を指揮。2018年より現職。博士（経営学 神戸大学）。
田岡 では逆に、CEOに必要な資質は何なのでしょうか。
音部 おそらく大統領や総理大臣に必要な資質と同じで、最も重要なスキルは「政治力」だと考えています。
田岡 おお、なるほど。それは社内に対しても、社外に対しても。
音部 そうです。例えば、規制産業であれば、それこそ政府に対してもですが、競合にも取引先にも株主に対してもです。
田岡 なるほど、確かに。
田岡敬氏
エトヴォス 取締役 COOリクルート、ポケモン 法務部長（Pokemon USA, Inc. SVP）、マッキンゼー、ナチュラルローソン 執行役員、IMJ 常務執行役員、JIMOS（化粧品通販会社）代表取締役社長を経て、ニトリホールディングス 上席執行役員。2019年1月21日より、エトヴォス 取締役 COO。
エトヴォス 取締役 COOリクルート、ポケモン 法務部長（Pokemon USA, Inc. SVP）、マッキンゼー、ナチュラルローソン 執行役員、IMJ 常務執行役員、JIMOS（化粧品通販会社）代表取締役社長を経て、ニトリホールディングス 上席執行役員。2019年1月21日より、エトヴォス 取締役 COO。
音部 究極を言えば、営業やマーケティング、製造などのスキルはすべてアウトソースできると思いますが、社内政治だけはアウトソースできません。だから、リーダーシップに立脚しつつ、政治がいちばん上手な人が社長をやるのが、社員にとって幸せだと思うんです。社内政治というと害悪っぽく聞こえますが、円滑な組織運営には必要で重要なことです。なので、CEOとCMOは本質的に違う能力が必要でしょう。CEOは必ずしもマーケティングに長けている必要はなくて、CMOがやればいい話なのです。もちろんCEOはその話を理解し、支援する必要はあります。
田岡 その場合、CEOはCMOに意思決定をどこまで委ねるんでしょうか。最終的に話し合って決めるのでしょうか。
音部 そう思いますね。最終意思決定はCEOだけれど、CMOは責任をもって提案するし、CEOの意思決定後は、その中でベストを尽くすというのが、プロフェッショナルとして重要だと思います。
