業界を生き抜く「人脈」のつくり方と生かし方
人脈づくりには相手の立場に全力で立ち、感情を動かすことが不可欠【BOLSTER 松田忠浩】
売れない商品を売るために人脈が必要だった
2002年12月。当時としては、早い方でしょうか。私は、社内リクルート制度を利用して現ソフトバンク(当時:J-PHONE) EC準備室に、飛び込みました。1997年4月に社会人となり、リクルート社出身のゴリゴリ営業の上司のもと、これまたゴリゴリ営業のパートナーを複数社担当し、いわゆる「ド営業」を学んできました。
「売れない商品を売ってこそ営業だ」
そんな言葉も当時の社内では聞こえてくる中、とにかく商品を売るためにグレー手前(白です)のことはやりましたし、お酒もたらふく飲みました。いま振り返ると、一番激しく無茶をしていた頃かも知れません。
当時、爆発的に売れていた「たまごっち」の商品力があれば、そんな営業活動は要らないのですが、私が担当した商品は違います。誰もが苦労するほど、商品力が無かったのです。
そんな商品を売るためにはどうしたら良いか。その答えは、「人脈(=仲間)」だったんです。
もちろん入社早々に人脈があるわけもなく、必死に仲間づくりに動きました。パートナーの信頼を得るために家電量販店の店頭にも立ちました。さらに、社長との商談の際には、先方の目頭が熱くなるほどの想いをぶつけたこともあります。
「うちの(会社)の為に、そこまでやってくれる松田さんを男にしてやる」
かたくなに競合商品を売っていた社長からの思わぬ一言でした。嬉しすぎて泣きそうになりました。
相手の立場にトコトン立ち、情熱をぶつけて信頼を得ることで「売れない商品」でも売れる(売ってくれる)。人脈とは、単純な人と人とのつながりではなく、感情を動かしたことで、且つ自分が信頼されることで生まれるものだと、初めて気付いたときでした。
社内の理解を得るための人脈
そんな「ド営業」の私が、ソフトバンクへの転職を機に転身。インターネット事業に2002年12月から携わりました。最初のミッションは、「2カ月でECサイトを立ち上げる」というプロジェクトです。当時のインターネット環境、2カ月で立ち上げるためのECのスペックなども、最初は全く分からず、突貫でベンダーと共に状況を整理したり、サービスインまでのスケジュールを引いたりしている中で発覚したのが、EC(新規)事業に対する社内の協力不足でした。
昨今、様々な会社で未だに起こっていると耳にしますが、当時も「社内のITリテラシーの無さ」「変革への不満」「リアル店舗への影響」といった問題が当たり前のように起きたのです。
思わぬ大きな壁でした。四面楚歌にもなりました。「売れない商品を売っていた時代」は、担当社員が同じ方向を向いていたため、経験したことが無かったんです。
さぁ大変。ミッション遂行のためには、プロジェクト推進部門だけでは不可能です。ECですので、商品や物流、CS、システム部門などの協力無しには成り立ちません(汗)。
しかし、それも社外へのアプローチと同じでした。未来のチャネルのことを何度も熱く語り、ときには相手部門の仕事を手伝い、夜な夜な仕事をしまくっていると、当初は反対だった人たちも、日に日に協力姿勢になってくれたのです。
激しい2カ月の末、無事に初期ECサイトをリリースし、関係部門から「ひとまず、お疲れさまでした」と言われた時には、本当に感激でした。仲間(=人脈)が生まれた瞬間です。もちろん今でも個別にメッセージするほどの深い繋がりです。
社外であっても、社内であっても人脈づくりは同じです。全力で相手の立場に立ち、相手の感情を動かし、そして信頼を得ることが、人脈づくりには不可欠なことであると、社内外の経験を経て強く感じました。
第3回では、ソフトバンクのEC事業推進の際に実践して来た人脈づくりについてお届けする予定です。