ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #49

社長もニックネームで呼ばれる。エアークローゼット 天沼聰氏が語る「理想のフラットな組織」

前回の記事:
ファッションのサブスクで大注目。エアークローゼット天沼社長が語る「顧客価値の根幹」
 スタイリストがコーディネートした洋服を月額制で借りられる女性向けファッションレンタルサービス「airCloset(エアークローゼット)」。2020年2月には登録数が30万人を超えました。前編に続き、エアークローゼット 代表取締役社長 兼 CEOの天沼聰氏に起業の背景から、理想とする組織のあり方について聞きました。
 

未経験のファッション業界に参入し、在庫を持った理由


田岡 そもそも天沼さんは、なぜ起業しようと思われたのですか。

天沼
 あまり明確な理由はないのですが、チームでなら一人でやり続けていても出せないパワーを出せるので、複数人で何かを為すことがすごく好きなんです。社会貢献という観点でも、チームであれば圧倒的に大きな貢献ができて変容を起こせます。その中で、私自身がリーダーとして強い組織がつくれたら楽しそうだなと、大学のころから思っていたんです。 
  
天沼聰
エアークローゼット 代表取締役社長 兼 CEO
1979年生まれ、千葉県出身。ロンドン大学にて情報・経営を学び、帰国後アビームコンサルティングにて IT・戦略コンサルタントを約9年間従事。2011年、楽天に移籍し、 UI/UXに特化したWebのグローバルマネージャーを務める。2014年7月、「“ワクワク”が空気のようにあたりまえになる世界へ」をビジョンを掲げ、エアークローゼットを創業。2015年2月、日本初の普段着に特化したファッションレンタルサービス「airCloset」を立ち上げる。EY Entrepreneur Of The Year 2017、JapanVentureAwards2018、デロイト日本テクノロジー Fast50にて売上げ成長率日本第1位など数々の受賞歴あり。

田岡 リーダーになりたいと思ったきっかけがあったのですか。

天沼 
高校の部活動で部長をやらせてもらい仲間と一緒に何かを成し遂げたときにすごく楽しいと感じたことがひとつかもしれません。あとは、父親が開業医で祖父や叔父も経営者だったという周囲の環境もあったと思います。

田岡 
高校、大学と海外の学校に通われていたことも何か関係していますか。

天沼 
起業とはあまり関係はしていないと思います。ただ、留学は私の人生にとって、とても大きく、自分の哲学をつくってもらえたと感じています。いまの組織づくりのベースの考え方も海外で得られたものなんです。

田岡 
具体的に、どのようなものでしょうか。

天沼 
一番大きかったのが、「自分にとっての当たり前は、自分にとってでしかなくて、もはや当たり前は存在しないんだということ。例えば、家の中で靴を履く文化の中で、自分ひとりだけ靴を脱ごうと主張しても意味はないですよね。裏を返せば、それぞれの考え方の一つひとつが正しいと捉えられるので、常にお互いにリスペクトし合うべきだ」という考え方です。

それは企業の組織においても大事です。例えば、エアークローゼットでは社内コミュニケーションをフラットにしたいという狙いから、社長室という物理的な空間を置いていません。それに、お互いをニックネームで呼び合う「ニックネーム制」を採用しています。

田岡 えっ、天沼さんも社員からニックネームで呼ばれるんですか。  
   
田岡 敬
エトヴォス 取締役 COO
リクルート、ポケモン 法務部長(Pokemon USA, Inc. SVP)、マッキンゼー、ナチュラルローソン 執行役員、IMJ 常務執行役員、JIMOS(化粧品通販会社)代表取締役社長を経て、ニトリホールディングス 上席執行役員。2019年1月21日より、エトヴォス 取締役 COO。

天沼 
はい、私はアッシュと呼ばれています。名刺にも書いてありますし、例えば、私のアシスタントはナタリーです。ニックネームで呼び合っている方が、コミュニケーションがフラットになりやすいんです。

田岡 
ニックネームは、どうやって付けるんですか。

天沼 
入社時に上長とディスカッションして決めています。とは言っても、ランチで話して決めるだけなんですが(笑)。とにかく、エアークローゼットをフラットなコミュニケーションができるチームにしたいんです。

田岡 
そう言い切れるのがすごいですね。

天沼 
何でしょうかね。三国志とか戦国時代が好きで、それと少し似ている気がします。

田岡 
マンガの『キングダム』を読み込んでいるビジネスパーソンが話題ですよね。

天沼 
はい、私も『キングダム』は全巻読んでいます(笑)。やはり集団の意思を統一させた上で事を為していく、そして社会への影響を大きくすることに喜びを感じるタイプなんです。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録