「元書店員マーケター」オススメの一冊 #08
心理から「ロイヤルティマーケティング」を学ぶための良書【書評】
ロイヤルティドライバーには2つの価値がある
さらに踏み込んでいる箇所が、顧客満足を高めるロイヤルティドライバーを「基本価値ドライバー」と「体験価値ドライバー」に分けたことだ。
前者の「基本価値ドライバー」は、品ぞろえ、品質、デザイン、価格、立地など、当たり前に向上させなければならない要素をマッピングし、基本価値として高めねばならないと定義している。
後者の「体験価値ドライバー」は、カスタマージャーニーの中で情報収集、来店、試着などの行動の中で顧客がどう感じたのかを「頭の満足」と「心の満足」に区分して測定している。
その手法に「NPS ®(Net Promoter Score・顧客推奨度)」を組み込むのだ。実際に渡部氏と取り組んで仕事をした際には、Web上で顧客に今の瞬間どう思っているのかというアンケートを取り、「ネガティブ」「ポジティブ」の分類と、NPS®評価を取っている。それぞれのジャーニ―段階で、同様のことを実施してデータを集めるのだ。
これをWebだけでなくリアルな店頭でも実践されているのを知ったときは驚いた。その質問票も社内で繰り返しワークショップを行いつくり上げて修正されることで、腹落ちしたものになる。
最終的には、NPS®からNRS(Net Repeater Score・顧客継続度)として顧客の継続率を見る指標、つまりLTV(Life Time Value)にまで昇華させている。
ここまでロイヤルティを定量化し、施策のPDCAをきちんと回すCRMはなかなかない。様々な事例も触れられているのでロイヤルティの定義に関心がある方はぜひご一読いただきたい。
商売と顧客を満足させることが好きであっても、それを自分の得意領域であるデータによる定量化と、明確に定性化するのは並大抵の努力では難しい。ひたすら現場で実践を続ける渡部氏だからこそ生まれた著書であることを繰り返しお伝えしたい。
- 他の連載記事:
- 「元書店員マーケター」オススメの一冊 の記事一覧
- 1
- 2