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日本オムニチャネル協会が設立、コロナ支援も開始 「デジタル人材を育てる場に」鈴木康弘会長

 4月16日、一般社団法人日本オムニチャネル協会が設立された。会長には元セブン&アイ ホールディングス CIOで、現在は企業のデジタル化を支援するデジタルシフトウェーブ 代表取締役社長の鈴木康弘氏、専務理事にはECサイト構築支援会社のecbeing 代表取締役の林雅也氏が就任した。会長に就いた鈴木氏に、設立の背景や具体的な活動内容、今後の展望などを聞いた。
(※取材はオンラインで実施。写真は過去の取材時のものを利用)
 

企業のオムニチャネル課題の解決の場に


――「日本オムニチャネル協会」を設立した経緯からお聞かせください。

 企業のオムニチャネルへの取り組みに、昔から課題を感じていたんです。たとえば、オムニチャネルは「販促」と勘違いされやすく、Eコマースを始めてインターネット上でプロモーションすれば、それで終わりと思われている節があるんです。しかし、オムニチャネルの主役は、あくまでも商品。それにもかかわらず、商品のサプライチェーンは無視されてきたのが現状です。

 また、コールセンターも顧客を知る接点として重要ですが、そこも全く連携されず、別部門がわざわざ顧客の声を知るための調査をしていたりします。さらに、オムニチャネルの実現には店舗とEコマースの統制が欠かせませんが、人事や組織の問題で店舗の売上をEコマースが奪うように見えてしまい、かなりの割合で部門間の仲が悪いんです。

 これら商品、売場、販促、コールセンター、物流、管理の全てを並列に経営視点でみていかなければ、オムニチャネルはうまくいきません。商品部隊だけ、マーケティング部隊だけなど、部分最適しても結果は出ないんです。日本オムニチャネル協会は、そうした課題をみんなで理解して、学び、実践できる人材を育てる場にしたいという考えから生まれました。    
    
鈴木 康弘氏
デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長
(※写真は過去の取材時のものを活用)
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。1996年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に従事し、ネット書籍販売会社イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立代表取締役に就任。2006年資本移動によりセブン&アイHLDGS.グループ傘下に入り。2014年にセブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任、グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。2015年同社取締役執行役員CIOに就任、グループシステムの改革に 着手し、デジタルシフトの骨格を作り上げる。2016年12月に同社を退社。2017年3月にデジタルシフトウェーブを設立、同社代表取締役社長に就任。多くのデジタルシフトを目指す企業の支援を実施している。

――オムニチャネルの定義について、どのように考えているのでしょうか。

 日本オムニチャネル協会では、小売や外食、各種サービス業を対象とし、店舗拠点を持つ企業の「デジタルシフト」をオムニチャネルとして定義しています。オムニチャネルと一口に言っても捉え方がバラバラでしたので、今回はこのように定義しました。



――具体的にどのような活動を行っていくのでしょうか。

 まずは、協会の理念から説明させていただきます。次の3つです。
 
  1. 目的に賛同する法人・個人が集まり、立場を超えた活動をする
  2. 常にオープンで闊達な議論を重ね、継続的にアウトプットし続ける
  3. 活動を通してオムニチャネルの業務・IT知識を学べる場を目指す

 なかでも私は人を育てる必要があると考えているため、協会としてデジタル人材の育成をしっかり取り組んいくつもりです。その対象は、小売などの事業会社と、システム会社に大きく分けられます。

 事業会社に対しては、CDO(最高デジタル責任者)のような立場の人が持つべきスキルを学ぶことができて、経営陣がしっかり判断できるための知識を集められる場を提供できることが価値になると思っています。

 一方で、システム会社にとっての提供価値は、顧客を理解できることです。私は仕事でSIerと関わることが多いのですが、彼らは顧客である事業会社のことを意外と知りません。顧客の要望を聞いてシステム化することに関してはプロフェッショナルですが、自ら提案することは苦手なんです。それはなぜかと言うと、やはり顧客をきちんと理解できていないからと言えるでしょう。あとは、SIer同士にも壁があるので、それを取っ払って情報共有ができる場にもしていきたいですね。

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