米国・空軍ROTCから電通に行き着いた、クリエイターのキャリア論 #02

仕事のモチベーション向上の秘訣は、アメリカ軍隊の方式にあった

「切り株バズ論」で内部要因を最大化しよう


 ハーズバーグ氏の二要因理論で、内部要因である「動機付け」を最大化することがモチベーション維持、強いてはキャリア形成の重要なファクターであることを理解して頂けただろうか。

 では、普段の日常において何を心がければ良いのだろうか。

 それは「自分のビジョンとコンセプトをしっかり持つ」ということだ。数々の経営理論、先人たちの見解の成功事例を見ても「ビジョンとコンセプト」が非常に大切で、それらがなくては何も始まらない。例えば、渋谷や六本木などにオフィスを構えているメガベンチャー(デジタル系広告会社やエンターテインメント事業のプラットフォーマーなど)のビジョンなどは非常にシンプルで分かりやすい。社長が何を考えているのかを、常に社員に浸透させるための工夫をしている。

 個人のキャリアにおいても同じで、変化がますます大きくなる今後のデジタル社会では、今まで以上に自分のビジョンとコンセプトが重要になってくる。

 私は普段の職業柄もあり、社会課題から垣間見える消費者(ターゲット)のインサイトや潜在ニーズを意識して仕事をする中で「切り株バズ論/Stump Buzz Model」を提唱している。ネーミングの発端は、目的を達成するためのコンセプト(コンセプトをバズらせるため)を設計するための考え方だったので、バズという単語が入っているが、これは自身のキャリア形成においても活用できる。

 これは自分のビジョン(どんな人でありたいか)、課題(ビジョンを実現するにあたっての障害となる要因)、コンセプト(課題を解決するためのコンセプト概念)、アセット(コンセプトを実現するための資産)の4つを自分の中で明確化することを意味する。その形が切り株に似ているため、そう名付けた。



 そして、課題とそれを解決するためのコンセプトは、自分の強み(Unique Sales Proposition/UPS)という解釈ができるのだ。さらに、自分の強みと市場価値/マーケットバリューが一致すれば、自分の市場価値ということになる。

 決して出世や給与・ボーナスといったような外部要因ではなく、「どんな人であるべきかの価値」であり、仕事そのものや自己成長といったような内部要因に該当する。

 これは事業開発を行う上でも欠かせない概念だ。何のために、なぜこの事業をやるのか、それが自社の強みを活かせているものなのか、市場価値があるのか、などの経営判断にも活用できると言える。

 自分のキャリアやその仕事内容にも当てはめて考えてみて欲しい。日本では「○○会社の誰々」といった所属する企業にフォーカスを当てる風習があるが、これからは「個」がブランディングされることで、企業のプレゼンスが上がるだろう。そういう意味では、今まで以上に個人がしっかりと、それぞれの仕事の価値を認識していかなくてはならない。

 これから訪れる価値創造社会(Society 5.0)では、情報社会(Society 4.0)のときに一般だったようなオフィスワークは減少し、リモートワークが増えていくだろう。また今回の新型コロナウイルスの影響によって、世界中が「強制進化」という道を辿っている。就活もキャリア形成も、そして仕事自体も今までにないスピードで進化していくに違いない。

 激動(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、不透明性(Ambiguity)が加速する中で、常に新しい領域の開拓と自分の働く意義を「二要因理論(動機付け・衛生理論)/ Herzberg’s theory of motivation」や、「切り株バズ論/Stump Buzz Model」を使って、キャリア形成をしていく必要が出てくると考える。
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