「マーケティング」という大海を、航海するための羅針盤 #01
DeNA 敏腕マーケターが語る、理想的なキャリアに必要な3つのスキル
「Basic skill」は経営目線。「Core skill」は現代に必要な力
では、今のご時世にマーケターはどういう能力を身に付けて、Canの領域を広げていけば良いのでしょうか?
私はイメージがつきやすいように、いつも船に例えています。船を正面から見た絵になります。
はじめに、船が走るのに重要なのが、一番下にあるエンジンの部分「Basic skill」です。
その人のキャリアや経験によって差分が出るかもしれませんが、そのエンジンとして間違いなく必要な要素は「経営目線で、事業目標数値にコミットできるか」に尽きます。
「利益は会社の通知表」という言葉があるように、マーケターは売上と利益にコミットするべきです。会社によっては、開発部門や営業部門が数値責任を負っているケースもありますが、そうであってもマーケターは必ず数値を見るところからスタートする必要があると思います。
船の一番下に持ってきたのは、この能力がなければ、他にどのような能力があっても、いずれかのフェーズで通用しなくなるからです。そういう意味もあり、船を動かすエンジン部分に、一番大切な「経営目線」を置いています。またマーケターとして必須のユーザー理解も経営目線と合わせてBasic Skillですね(最近の船は、下にエンジンがない場合があるというツッコミはご容赦ください。あくまで例と思ってください)。
次に、このエンジンの上に何を積むかですよね。
ここは「Core Skill」になり、マーケターの職種によって違います。世の中に必要とされているマーケティング手法の中で、いくつか自分に合っている物を選べばいいと思います。私の場合は、自分でクリエイティブがつくれるわけではないので、次の3つのスキルを意識しています。
「ナラティブマーケティング」「デジタルマーケティング」「SNS中心のコミュニティマーケティング」です。
「ナラティブマーケティング」は、「ナラティブ=ストーリー」をつくるマーケティングです。個別の施策をバラバラと展開するのではなく、全ての施策が1本の糸でつながるように設計し、各施策に一貫性を持たせるものです。今は顧客ニーズが多様化し単純な広告では効かず、誰が言ったかが非常に大切です。企業の発信するメッセージのストーリー性が大切です。この能力はストーリーをつくるために大切なユーザー理解力も含んでいます。
「デジタルマーケティング」はその名の通り、デジタルメディアを活用した企画を組み立てられる力です。世界中の多くの国でデジタル広告の売上がマス広告を逆転し、日本でも2019年にデジタル広告がメディア別出稿金額で1位になりました。また、スマートフォンがこれだけ普及しているので、ユーザーを理解する上でもデジタルの知識は持っていて当たり前です。この力がなければ、今後は通用しなくなるでしょう。デジタルマーケティングの注意点はAIの自動入札が賢いのでどんどん最適化されるのですが、最適化されすぎるとROIは合ったとしても、全体ボリュームとして縮小均衡になってしまうケースも散見されるんで、俯瞰で新しい切り口を考え続けるのも大切です。
3つ目が「コミュニティマーケティング」です。現代社会は情報が溢れ過ぎ、自分ひとりで物事を判断するのに非常にカロリーがかかることから、「インフルエンサーがすすめた商品だから」、「会社の先輩がすすめたから」、「ショッピングサイトでレコメンドされたから」など、消費の判断軸を他者に委ねています。
この他者の意見を可能な限り、企業側からの働きかけで良い流れにするのが大切です。インフルエンサーマーケティングやファンマーケティング、SNSマーケティングなどとも言われていますが、お客さんの意見からコミュニティをつくるという概念から、ここでは「コミュニティマーケティング」と呼ぶことにします。
私はこの3つのマーケティングが「経営目線」の次に持っておくべき必須要素だと思い、強化しています。こうした領域は、自分で業界状況やポートフォリオを考えて必要なスキルは何か考えることが大切です。この3つのスキルは他人と重複することもありますが、質を追求すれば良いかと思っております。