ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #52

売上高370億円、経常利益23億円。バリュエンスは街の中古買取店から、どう急成長したのか

 

オークションを改革して効率化、出来高は月20億円に


田岡 その後、ご自身でもオークションを運営されるわけですね。

嵜本 はい、当時出品していたオークションに参加する中で、オークションの運営ノウハウが分かってきたんです。そして自分なりに、改善点を見出しました。例えば、そのオークションでは、商品状態の質疑も含めて1商品当たり落札までに1分はかかるため、1日にさばききれる点数が決まってしまい、これでは出来高が稼げないと感じていました。

また、時間もかかるため、夕方に近づくにつれて参加者の集中力も低下してしまう。それならば自分たちで方法を考えようと、2013年4月に自社のオークションをスタートしました。
 
バリュエンスホールディングスが運営する「STAR BUYERS AUCTION」。2019年11月に、2020年9月よりリアルな場所での開催は止めてオンラインで開催すると発表していたが、今回の新型コロナウイルスの感染拡大を受け、前倒しして4月に切り替えた。

田岡 どう改善されたのですか。

嵜本 まずは、自分たちのオフィス内にオークションルームをつくり、バイヤー向けに商品の下見期間を一週間ほど設けました。そしてオークション当日は商品写真を映したモニターを見ながら落札価格を競います。

下見中にしっかりと商品の状態を確認した上で値決めができるため、とてもスピーディーに進められるようになりました。当時は、自分たちのオフィスでオークションを行うことも、前方のモニターに商品写真を映すという方法も画期的だったと思います。

田岡
 現在、オークションはどれくらいの頻度で開催しているのですか。



嵜本 国内では毎月4日間開催しています。オークションを始めた当初の出来高は月に2億円程度でしたが、現在では20億円程度になってきました。

田岡 「事前に商品を下見してもらった上で落札してもらうことで、1商品あたりにかける時間とオークション時間を短縮させる」。言われてみれば当たり前ですが、当時は誰もしていなかったんですね。最初にヤフオクに出品されたのも嵜本さんですし、なぜそんなに柔軟に発想できるんですか。

嵜本 うーん、無駄なことが嫌いなんですよね(笑)。それと、いかに利益を最大化するかに取り組むのが楽しかったんですよね。

田岡 何かをハックする感じですか。

嵜本
 そうですね。考えて変化をつけて、それによって今まで以上の価値を生み出すのが好きというか、趣味みたいな感じでした。ヤフオクに出品していたときも、商品の写真の撮り方、背景の色など、工夫をすればするほど結果にもつながりました。それを繰り返すうちに、誰よりも早く始めて誰よりも早く失敗すれば、改善するチャンスを一番に手に入れられると学んで、あらゆる物事を無意識にそういう感覚で見るようになったんです。

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