ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #52

売上高370億円、経常利益23億円。バリュエンスは街の中古買取店から、どう急成長したのか

 

O2Oに早くから取り組み、東京進出へ


田岡 バリュエンスが業界内で存在感を発揮し始めたのは、デジタル上での集客に成功した面もあると思います。デジタルマーケティングに注力するきっかけは、何だったのですか。

嵜本 私がこの業界に入った15年前は、タウンページに買い取りの広告を載せて集客していましたが、費用対効果があまり良くなかったんです。というのも、もともと売りたいというお客さまの意向がなければ、広告は効かないですからね。

その一方で、インターネットが台頭し始め、何やら検索連動型広告という広告があって、検索されたキーワードに紐づいて広告が出せるらしいと知り、試しに5万円の広告費をかけてみたのがきっかけです。2004~2005年ぐらいのことでした。



田岡 当時、同業はあまりしていなかったんですか。

嵜本 はい、そうですね。でも、最初は広告の出し方が下手で、一瞬で5万円を消化してしまいました。ただ、そこから工夫しながら継続して出稿していると、今までは紙媒体を見て来店していたお客さましかいなかったのに、インターネットを見たという声がすごく増えてきたんです。

田岡 それは、アンケートを取られたのですか。

嵜本 そうです。しかも、紙媒体への出稿よりも圧倒的に低いコストで高価格帯の商品を持ち込むお客さまを増やすことができたので、紙媒体へのコストをすべてWebに投資する方向に舵を切りました。加えて、Webに知見のあるスタッフを採用して、ホームページなども他社よりも早く最適化していきました。

田岡 今でもSEOに力を入れていますか。
    
嵜本 はい、あらゆる買い取り系のキーワードで、私たちのサイトが上位に表示されています。ただし、そこで課題になったのは店舗の数でした。全国のアクセスがあっても、お客さまの近くにリアル店舗がなければ商品を持ち込めません。

田岡 そうですよね。

嵜本 これだけの需要があるにも関わらず、店舗がないことの機会損失が計り知れないと分かり、2009年に関東に進出したんです。
 
ブランド買取専門店「なんぼや」。グループ全体で全国に70店舗以上展開。

田岡 なるほど。FABRIC TOKYOの森さんも検索ユーザーのエリアを調べて出店したと言っていました。今で言うO2Oに早くから取り組まれていたのですね。

嵜本 はい、まずはインターネット内の競争にしっかり勝ち、立地戦略を立てた上でリアル店舗に送客する。そして全国の主要都市に店舗を出店し、買い取り型のO2Oをいち早く完成させました。現在は全国で70店舗、東京は20店舗以上を展開しています。

田岡 東京の比率が高いのですね。出店する際は一定の売上を超えたら、近くにもう1店舗出すといったドミナント方式を取られているんですか。

嵜本 はい。アクセス解析をして取りこぼしている地域を割り出して、出店戦略を立てています。

田岡 では、サイトを訪問した人のIPアドレスを解析して出店エリアを決めているということですね。そうした戦略を早くから実行できたのはやはり先ほどおっしゃっていたように、知見のある社員が入社したことが大きかったのでしょうか。

嵜本 それは、かなり大きかったですね。そうでなければ、ここまで成長できていませんでした。スタッフもたまたまSEOに精通した方が応募してくれて(笑)。どうしても入社してほしかったんで、かなり口説きましたね。
 

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録