ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #53

リユース業界の革命児。バリュエンス 嵜本社長が挑む世界攻略と、個人資産の見える化

 

ブランド品側にとっても有用なデータを取得


田岡 なるほど、商品が一般消費者に渡る前に落札者であるBtoCリユース事業者を経由するという余計な物流もないわけですね。

嵜本 はい。落札者の方々にとっても、落札後、写真を撮ったり、ECサイトなどに出品したりする手間が省け、メリットがあると思っています。言ってしまえば、私たちはノーリスクでリユース事業者さまの在庫を通してBtoCビジネスをしているようなものです。

その際に手数料をいただくので商品が落札されたときだけでなく、消費者に売れたときにも利益が出せるようになります。それを世界レベルで実現しようとしているので、海外拠点をつくっているんですよ。

田岡 では、世界中のバイヤーに認知と信頼を広げていくということですか。

嵜本 その通りですね。

田岡
 そうなると、御社の商品データベースやフォーマットが世界標準になっていくから、よりポジションが強固になっていきますね。



嵜本 そうですね。あとは、世界各国に何がいくらで売れるのかというデータも集まってくると思うんです。たとえば今だと、ロレックスは日本が一番高く売れて、オメガやブライトリングなどトータルで見れば米国が高いんですね。そうした各国の傾向など、世界中で有用なデータが取れるようになります。

これが何に役立つかというと、一次流通です。ブランド側が新商品の販売価格を決定する上で、参考になるデータになるのではないかと考えています。

田岡 なるほど。ブランド側は、データをもとに供給もコントロールできますね。市場に出過ぎていれば生産数を調整したり、商品ライフサイクルのピークを過ぎていることが分かれば、新商品を出したり。

嵜本 はい。それは、サステナビリティという文脈もあります。先日、フランス政府がファッションブランドの在庫や売れ残り品の廃棄を禁止する法律を施行しました。

今までは、ほとんどのブランドが在庫の半分を捨てる前提で生産していましたが、これからは残りの半分をどう流通させるかという問題が起こるわけです。その問題に対して、私たちが何か役立てることがあるのではないかと考えています。

田岡 利益を最大化するには、生産量のコントロールが必要になりますもんね。嵜本さんは、なぜそんなビッグピクチャーが描けるんですか。

嵜本 やはり興味があるからでしょうね。興味があるから無意識にいろいろなメディアから情報を吸い上げて、蓄積した情報の点と点を線にしているのかなと思います。

田岡 頭の中でこの情報とあの情報をつなげてということが起きているのだろうと。

嵜本 そうですね。他業界で起きていることは、いずれ必ずリユース業界にも流れます。他業界で起きたことに対して、自分なりに仮説を立てて戦略に落としていくという感じです。

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