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マーケターズ・ロード 紺野俊介 #01

「インターネットの未来に、希望を持ち続けてほしい」―紺野俊介、アイレップ社長退任に寄せて

 成長企業の第一線で活躍するトップマーケターは、どのようにキャリアを歩み、その時々で何を考え、どう実行してきたのか。そしてその経験は、次なるキャリアや現在の仕事にどのように生かされているのかに迫る連載「マーケターズ・ロード」。

 運用型広告において大きなシェアを誇る、デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップ。代表取締役社長 CEOとして10年にわたって同社の成長を牽引してきたのが紺野俊介氏だ。代表に就任した2009年当時は93億円だった売上が、2017年には902億円と、ほぼ10倍の規模へと拡大した。その立役者である紺野氏が、6月26日をもって代表職を「退任」する。

 その経緯と、アイレップで走り続けてきた15年間への思い、同社社員をはじめインターネット広告業界に携わるすべての人に向けたメッセージを聞いた。
前・アイレップ 代表取締役社長CEO
紺野俊介(こんの・しゅんすけ)
大学卒業後、EDS Japan(現日本ヒューレット・パッカード)を経て、2003年8月にアイレップに入社。翌2004年にインターネットマーケティング事業部マネージャーとなり、2005年には執行役員インターネットマーケティング事業部長に。2006年取締役、2007年専務取締役を経て、2009年に代表取締役社長に就任。デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)との経営統合に伴い、2016年にD.A.コンソーシアムホールディングス取締役副社長、2017年よりDAC取締役を兼務。
 

後ろではなく、「前を向く」ことが大事

— 入社以来15年、また代表として10年を過ごしてきたアイレップを、この6月で去ることになりました。現在の心境を聞かせてください。

 代表取締役社長の退任を開示してから1カ月が経ち、ようやく気持ちの整理がついてきました。これから進む方向性は定まっているものの、次の行き先は現時点では確定していません。

 40代は、これまで積み重ねてきたことを、もう一度生かせるタイミングだと考えています。今が絶頂期だったとは思いたくありませんから(笑)。少なくとも現在の自分の結果を超えることが、今後5~7年間、つまり50歳までにやるべきことかなと思っています。

 私にとって、働く動機として重要なのは「規模・影響力が大きく、かつ自分が正しいと思えることを行える場」であること。それをもう一度実現するために、チャレンジしていきます。

 この15年間を振り返って、感慨にふける気持ちが全くないといえば、嘘になります。しかし、過去を振り返ることが賢明かというと、そうではありません。アイレップを辞めるに至った経緯は、自分としては本意ではないこともありましたが、後ろを向いたところで自分が得することはないし、周りにも良い影響を与えません。やはり前を向くことが大事だと思っています。

経営統合の成功と、超えられなかった企業文化の壁

— 紺野さんは、アイレップを国内最大級のデジタルマーケティングエージェンシーへと育て上げました。しかし、6月にその代表職を退任(※注)し、合わせてデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム 取締役およびD.A.コンソーシアムホールディングス取締役も退任されます。その経緯を教えてください。

 アイレップは2006年に博報堂DYメディアパートナーズと資本業務提携したのち、2010年にデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)の連結子会社となり、DACとの関係を強化していきました。そして2016年にDACとの共同持株会社 D.A.コンソーシアムホールディングスを設立し、経営統合を果たしたのです。

 2006年から2016年の10年間でメディア環境は大きく変化しました。純広告と運用型広告の間の垣根はなくなり、FacebookやTwitter、LINEといった新しいメディアが登場したことで運用型広告は複雑化しました。もはや、広告手法で組織を分けることは難しくなったのです。メディア環境の変化や企業としての成長を考えたとき、DACとの経営統合は合理的な判断だったと思っています。

 経営統合後の業績を見ても、同じことが言えます。ホールディングス新設時は800億円ほどだった時価総額は、いまや2000億円を超えました。この規模ながら、前年比20~30%と高い成長率を維持してきたことは、経営統合が正しかったことの証左と言えるでしょう。

 私の退任の報に接して、複数のメンバーから、アイレップが強みとしてきたトレーディングデスクチームをDACに統合していくことや、もっと遡ってDACと経営統合したことに対して、やや悲観的な声が聞こえます。しかし、繰り返しになりますが、事業の成長、マーケットからの評価という点で、正しい経営判断だったと思っており、そこに何ら疑問を持っていません。

 ただし、DACとアイレップの企業文化の融合は、想像以上に難しいものでした。そして、それが今回の私の退任につながったと言えます。私がD.A.コンソーシアムホールディングス、アイレップおよびDACの役員を兼務することで文化の融合を実現しようと試みたのですが、それは叶わず、今回の結果になったと考えています。もちろん、私の退任という結論に至った会社側の選択が正しかったかどうかは、今後の結果が指し示すものと思います。
 
※注
6月の定時株主総会および同日開催の取締役会にて、アイレップの新社長には高梨秀一氏(現職:アイレップ取締役副社長 COO、DAC 取締役)が就き、新体制・新方針で事業運営をしていく旨が発表された。
 

— 具体的に、どのような文化同士を融合させたいと考えていたのでしょうか。

 メディアレップ(DAC)は、端的に言えば、「いい商品を開発し、安く仕入れて売り切ること」がビジネスのゴールです。一方の運用型広告代理店(アイレップ)は、「お客さまから預かった予算を最適化すること」を目指すビジネスですので、「売り切る」というような発想はありません。実は、商材の扱い方に対する考え方が、まったく異なると言えます。

 
 また社内制度も、両社では大きく異なります。DACは、一定年次までは年功序列的に職位が上がる制度ですが、アイレップにはありません。そしてキックオフでは、DACは業績報告や目標発表に重きがおかれ、アイレップは事業の進捗や取り組みの発表に重きがおかれます。全社イベントも、DACは新卒メンバーの出し物があったりしますが、アイレップは現場社員によるプレゼンテーション大会です。

 どちらがいいと主張するわけではありません。押し付け合うのではなく、新しくつくっていく。それが、目指すべき姿だと考えていました。

 もともとDACが掲げていたブランドスローガン「Empowering the digital future」に込められた精神、デジタル社会の未来に次々と活力を与え切り開いていくという志を、アイレップとの文化融合を通じて実現していくのが理想でした。

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