"Go Funny" 迷ったら面白い方を選ぶ、外資経営者のキャリア論 #01

外資系企業でクビになりかけたのに、社長にまでのぼりつめた男

 

なぜHは社長に就任できたのか?


 10年分で、長い話になってしまいました。ここで、なぜ彼が社長になれたのかを分析してみましょう。

 まず、こうして書いてみると「つまらないことで、クビにしようとしたQが一番悪いね」という冷静な意見もありますが、「大概人事というものは、些細なことで決まっている」ことがわかります。

 もちろん出世するためには、しっかり実績を残せる実務能力が必要です。それがないと、どうやっても評価されないでしょう。しかし、それだけでは足りないのです。

 Hの場合、知的能力は高かったのですが、当初は、いかんせん心持ちが利己主義すぎました。自分を中心に考え過ぎて、相手が何を求めているかを全く考えることができていませんでした。

 仕事は相手があるものです。相手が何を求めているか、それを、誠実に責任をもってこたえることが基本です。その基本がなっていないと、どんなに頭がよくても嫌われて終わりです。これは日本の企業に限らず、外資でも同じです。



 上司に「こびへつらえ」と言いたいわけではありません。上司も人間ですから、自分のことをリスペクトしていない相手には、いい気がしません。そして、上司だけでなくクライアント、パートナー、仕事をする相手には全員そうしたリスペクトを持たない限り、上手くいかないのです。
 
 そして、この「相手をリスペクトできなければ、いい仕事はできない」という一見当たり前のことに気づかない人は、意外とたくさんいるのです。

 Hはあの試用期間延長宣告で、それを心底理解できたのでしょう。それで、その後は、見違えるように謙虚な人間になりました。

 なかなか自分を変革できる人間はいませんが、Hにはそれができる能力があったのです。社長にまでのぼりつめることができた背景には、こうした能力があったからだと思います。
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