「マーケティング」という大海を、航海するための羅針盤 #10前編

Clubhouseは、なぜ人気? 魅力を「体験」軸から考えてみた

 

2.「人間性の大切さ」の発見


 Clubhouseのフォロワーが多い人の特徴としては、かなり初期に始めたという先行者メリットや、TwitterやInstagramのフォロワーがもともと多い、相互フォローをたくさんしているなど、さまざまな要因があるように思います。そのなかでも、フォロワーが多い人の背景のひとつとして、人間性があります。

 部屋でトークしていると、ギバーとテイカーという、人間性の差分を如実に感じるのです。アダム・グラントさんの書籍『GIVE&TAKE』の内容を参考にしながらお伝えします。ギバーとは、場の雰囲気を良くしたり、リスナーのことを考えて学びのメッセージを発信する人、つまり与える側の人のことです。一方で、テイカーというのは、自分の利益を最優先にする人で、発言のターンが回ってきたら、宣伝をしたり、流れに沿わない自分語りをしたりする人や、相手に対して無用のマウントを取る人を指します。

 日本人は自己主張したり、発信したりすることが苦手な人が多く、自分が話すターンが気軽に回ってくるClubhouseで簡潔に話すのが難しいケースが見受けられます。スピーカーになった瞬間に、自分のプロフィールを5分以上語り、聞いているリスナーが大量離脱するケースも目の当たりにしました。こういう場合でも、ギバーがひとりでもいると、相槌を打ったり、話を広げたり、深掘りしたりして場をつないでいます。

 ギバーはルームの議題にあった議論をして、聞いているリスナーの事を考えて、なんらかの“気付き”を与えようと模索します。その結果として話を聞いた人は、その発信者に好意を抱いて、フォローをしてくれるというメリットもあります。逆に言うと、テイカーは話をしていてもフォロワーが増えません。ここから分かるのは、コミュニケーションは「伝えた」という事実より、「伝わったか」が全てということ。そのため工夫が必要です。



 例えば工夫の1つとして、話すことが苦手な人はbioと呼ばれるプロフィール欄に自分が話したいことをあらかじめ書いておき、「自己紹介はbioを読んでください」とするだけで良い場合もあるでしょう。全てを1ターンで話そうと気負いすぎず、気楽なコミュニケーションアプリであることを意識すると良いかもしれません。

 最近、芸人さんや落語家さんなど話すことを生業とする人の参加が増えています。生放送で一発収録のClubhouseとの相性は抜群ですが、そうした人たちと自分を比較するのはやめたほうが良いでしょう。上手に話す必要はなく、自分にできることを探してみるのが良いかもしれません。

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