ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #05

【吉野家 田中安人】飛び込み営業がきっかけで、マーケティング責任者に就任(聞き手:ニトリ 田岡敬)

ダイオウイカやマグマを題材にキャンペーン


田岡
 はなまるうどんのCMOになった後は、どのような施策を手がけられたのですか。

田中 当時、河村からは「人事から商品開発まで、すべてに顔を突っ込め」、それから「金はないけれど、売上をあげろ」と言われました。

 僕はCMOを「社長の夢の実現担当」だと定義しています。「金はないけれど、売上をあげろ」と言われたら、普通は「できない」と言うかもしれませんが、僕は河村には「できないと言わない」と決めていたため、とにかく知恵を絞りました。そこから生まれた企画のひとつが、ダイオウイカのエイプリルフール企画です。

田岡 話題になった企画ですね。

田中 はい、これはダイオウイカをまるごと天ぷらにするというネタで、エイプリルフールに合わせてインターネット上で公開しました。

 このアイデアは、たまたま見ていたNHKの「ダイオウイカ特集」が2ちゃんねるで盛り上がっていたことから、ダイオウイカをネタにすることで話題化すると感じたことがきっかけです。昨対比で、最高400%の売上を記録した店舗もありました。

 勝因として言えるのは、企画に参加した人全員が楽しみながら仕事をしていたこと。今の時代はこちら側の人間が楽しんでいることが伝わるんですよ。つくっている自分たちが楽しんでいないとお客さまを楽しませることはできません。
 
ダイオウイカキャンペーン。Webサイトのソースコードの中にもダイオウイカを描き、マニアックな人からも喜ばれた。
 この成功を受けて、翌年のエイプリルフールに「マグマあんかけうどん」という企画を立ち上げました。これは、噴火活動に伴い生まれた小笠原諸島・西之島新島にはなまるうどんを出店し、オープン記念として西之島新島産のできたてマグマをかけた「マグマあんかけうどん」を販売するという企画です。これも「ダイオウイカ」以上の成果を求められ、「できない」とは言わない自分としては、必死で考えて生まれました。この企画も、ブレイクしましたね   。
 
「マグマあんかけうどん」

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