「マーケティング」という大海を、航海するための羅針盤 #12

人材が流出しない「いいマネジメント」を実現するための4つのポイント【DeNA 今西陽介】

 

2.徹底的に「任せる」という覚悟


 最初に断っておきますと、「任せる」と「放置」は明確に違います。「任せる」とは、メンバーの状況や能力を把握した上で業務を依頼して、信じて、そっと見守ることを言います。放置は、その逆でメンバーの状況を把握せず、見守らないことを言います。

 皆さんも経験があるかもしれませんが、細かく管理されていると最初のうちは楽かもしれませんが、ある程度成長してくると、「自分の仕事が不十分なので、管理されているのかな?」という気持ちになってしまいます。

 マネージャーの重要な能力のひとつとして、「一度任せると決めたら、信じて待つ」が挙げられます。もちろんメンバーは適切な「報連相(報告・連絡・相談)」はすべきですが、自分で裁量を持って、考えて結果を出した方が将来の価値は大きいです。なぜなら自分で考えて動いた結果というのは、次回以降の再現性が見込めるからです。

 マネージャーがひとりで決めていくというのは、プレイヤーとしての実力がある人にとっては楽ですし、短期的には良いかもしれませんが、長期的にその状態を維持するのは不可能です。

 これは歴史的にも、ひとりの優秀な人の統治が長続きしないことからも明らかです。マネージャーは自分が単にやりたいことを押し付けるのではなく、方針を示し、メンバーに権限を移譲し、組織が喜ぶことを第一に考えていくスタンスであるべきです。

 マーケティング観点では、冒頭の「お客さま理解」も重要ですが、高いレベルで施策を再現していくということは、能力のひとつとして非常に大切です。


 

3. 多様性を加速させる


 いわゆる、ダイバーシティです。ただ、ここでいうダイバーシティとは、女性や外国人の登用を増やしましょう、という話だけではありません。年齢・役職・性別・自社他社を問わず、ビジネスには様々な立場から意見が出てきます。

 そうした意見を組織の上流にいる上司がふさぎ止めるのではなく、川の水が上流から下流にスムーズに流れるように、活発な議論が生まれるような場をつくることが多様性です。

 例えば、マネージャーが議論しているとき、偉そうに「これが正解だぞ」とメンバーに強要するのではなく、ひとつの選択肢として案を提案します。その結果、チームのメンバーからも活発に意見が出てくることがあります。マネージャーは、良い案は全て採用していくという雰囲気づくりを行うべきです。そこに、年齢や役職は関係ありません。

 自分と意見が違う人とやりとりすることは、プラスになることはあってもマイナスになることはありません。プライドが高い人はマイナスに感じることもありますが、ビジネス上では「全員が賛成意見を言う」ケースは成功しません。意見が出まくって散らかる場合は、方針とともに意思決定することもマネージャーの仕事です。

 消費者がある一定程度、満たされている現代社会では、どのようなサービスでも商品でも消費者の嗜好が細分化されており、全てのWANTSを満たすのは難しいのですが、同じような話は社内でまずは様々な観点の意見を風通しよく出るような空気は必要です。

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