マーケターズ・ロード 鈴木康弘 #02

転職を思いとどまらせた父・鈴木敏文の言葉、そして孫正義との出会い【デジタルシフトウェーブ 鈴木康弘】

孫正義から入社の誘い。ソフトバンクへ転職

 シンガポールでの勤務を終えたあと、縁あってソフトバンクへ至りました。31歳のときのことです。

 きっかけは1996年、孫正義社長との出会いです。

 孫さんと僕には、とある印刷会社の社長という共通の知り合いがおり、その人の引き合わせで焼き肉ランチに行ったのが初対面。海外駐在中、一時帰国しているタイミングでしたから、富士通を辞めるつもりなどありません。



 ただ、「面白い人がいるから」と紹介され、軽い気持ちでお会いすることにしたのです。印刷会社の社長も、僕をソフトバンクに入社させようという意図があったわけではなく、のちに転職の報告をした際には驚いていました。

 「情報革命で人々を幸せにする」と熱く語る孫さんの姿に、『第三の波』に見た未来が重なって見えたような気がしました。意気投合したランチの終わりに、孫さんから「一緒にやろう」と手を差し出され、転職を決意したのです。

 ソフトバンクへの転職を決めた、とは言え今抱えている仕事を収束させてから転職しようと思っていることを父に話すと、今度は一転、「今すぐ行け。会社というものは、決めたら3日で辞められるものだ」と(笑)。

  “解説”がないのでわかりませんが、その時々の僕の状況を見てアドバイスしていたのでしょう。後になって知ったのですが、孫さんは1980年代に尊敬する人として父を訪ねており、2人は旧知の仲でした。

 今ほど転職が当たり前ではない時代でしたから、辞めるとなれば社内はざわつきました。僕は富士通で、一定の評価を得ていましたから、人事部長からは「同期社員の中でトップ評価なのに」と懇々と諭されました。

 しかし僕は、社内での評価には、興味もこだわりもあまり持てず、転職の意思が揺らぐことはありませんでした。
 

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