マーケターズ・ロード 鈴木康弘 #04

Amazonにどう対抗するか? 逆境を超えるアイデア力でEC事業を黒字化【デジタルシフトウェーブ 鈴木康弘】

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在庫商品の充実化、試行錯誤で課題を解決

 1999年11月の「イー・ショッピング・ブックス(現 セブンネットショッピング)」のサービス開始に先立ち、5月に記者会見を行いました。

 孫さん(孫正義)はその場で「年内にサービスをリリースする」旨を発表したのですが、実はこれ、事前の打ち合わせにはなかった話でした。僕は「年内を目指しますが」と伝えていましたが、年内と明言してしまったのです(笑)。

 会見を終えた孫さんに、「わかりました、言ってしまったものはやりますよ。でも、ソフトバンクから人を出してください」と言うと、「鈴木、それとこれとは違う。社長というのは、自分で人を見つけてくるものだぞ」と叱責されてしまった。

 友人に声をかけたり、求人広告を出したりして、何とか人を集めました。5月に記者会見、8月に会社設立、そしてシステムを完成させてサービスをリリースしたのが11月24日。記者発表から半年、徹夜続きの毎日でしたがなんとか完成させることができました。

 イー・ショッピング・ブックスは、リリースから5年後にようやく黒字化を達成しました。その過程は、次々に表出する課題を一つひとつ解決することの繰り返しで、さまざまな苦労がありました。



 例えば、在庫商品の充実化。サービス開始当初、トーハンの在庫は常時3万アイテムほどで、それ以外は各出版社から都度取り寄せなければならず、注文から受け渡しまで時間がかかるという問題がありました。その解決策として、トーハンの倉庫に各出版社から1~2冊在庫を置いてもらうことでした。これをトーハンの新しい事業として立ち上げて欲しいとトーハンを説得し、了承してもらいました。

 その在庫は、イー・ショッピング・ブックス以外の書店に出しても構わないが、在庫引当優先順位はイー・ショッピング・ブックスを1位にしておく、という戦略です。これがのちに、「ブックライナー」(編集部注:トーハンが設立した販売会社。加盟書店4500店向けに、店頭で受けた注文品を3日で届ける「本の特急便」を展開)としてトーハンの事業となりました。
 

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