マーケターズ・ロード 鈴木康弘 #04

Amazonにどう対抗するか? 逆境を超えるアイデア力でEC事業を黒字化【デジタルシフトウェーブ 鈴木康弘】

特典付きセット商品を開発しヒット。逆境を超えるアイデアの力

 また、取扱商品の「特長」をつくることにも力を注ぎました。

 2000年に日本に上陸したAmazonは、とにかく物量の多さが強みでしたから、それに対抗するにはイー・ショッピング・ブックスのオリジナル商品ラインアップが必要だったのです。書籍やDVDのようなパッケージ商品ほど、差別化が難しいものはありません。そこで僕が考えたのは、子どもの頃に好きだったコミックを“大人買い”できるセット商品でした。

 しかも、ただセットにするだけではありません。イー・ショッピング・ブックスならではのプレミアムな特典をつけるのです。

 例えば、小学館の編集部にあった、故 藤子・F・不二雄先生の原画など。そうした特典つきセット販売の契約を取り付けるために、出版社から出版社へと走り回りました。講談社のコミック部門トップと、何時間もコミック談議に花が咲いたこともありました。子どもの頃に漫画っ子だったことが役に立ちましたね。



 なかでも大ヒットしたのが、徳間書店『風の谷のナウシカ』(宮崎駿)の1-7巻セットでした。「スタジオジブリの映画『風の谷のナウシカ』は、実は原作コミックのおよそ3巻目までの内容となっており、本作には続きがある」という内容とともに、ヤフートップに広告を掲載したところ、瞬時に1万セットが売れたのです。

 イー・ショッピング・ブックスは、2004年には100億円を突破、2008年には200億円を達成しましたが、創業5年目の2003年までは赤字決算が続き、周囲からの目は、それは厳しいものでした。

 立ち上げから黒字転換するまでの5年間は、ほとんど休むことなく働いていましたね。一度だけ、週末にかけて1泊で温泉に出かけたところ、当時ヤフーの井上さんに「へー、赤字会社の社長が温泉に行くんだ」とニヤニヤしながら言われ、二度と行かないと心に決めたこともありました(笑)。

 黒字を達成したことをソフトバンクに報告をすると、孫さんや井上さんを含め、多くの先輩方が祝ってくれました。当事者である僕はもちろん嬉しかったですけれど、先輩たちも嬉しかったんじゃないでしょうか。

 「“はねっかえり”が、ちゃんとやったね」って(笑)。
 

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録