マーケターズ・ロード 鈴木康弘 #04
Amazonにどう対抗するか? 逆境を超えるアイデア力でEC事業を黒字化【デジタルシフトウェーブ 鈴木康弘】
2018/08/27
- セブン&アイ ホールディングス,
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「ネットとリアルは必ず融合する」という信念のもと、セブン&アイへ
2006年、イー・ショッピング・ブックスの資本移動により、僕もセブン&アイ・ホールディングスグループ傘下に入りました。当時、Amazonの存在感・規模は加速度的に増しており、書籍のインターネット販売は1位がAmazon、2位がイー・ショッピング・ブックス、3位が楽天で、1位と2位の間の差は歴然としていました。
この状況下で、どう戦っていくか――そこで、ネット通販とリアル店舗を融合させることを考えたのです。かねてから、あらゆるサービスがネットで完結する世の中は気持ちが悪いし、そんな世界は嫌だと思い続けてきました。
ネットにはネットの、リアルにはリアルの良さがある。お客様の都合に合わせて自由に購買チャネルを選べる環境をつくること、つまりオムニチャネル化を実現する必要があると考えたのです。
2008年頃には、「ネットを制したAmazonは、次にリアルな店舗を手に入れる」と確信していましたから、ネットとリアルの融合は、一刻も早く実現しなければならないミッションでした。
「ネットとリアルの融合」と一言で言っても、アプローチの仕方は大きく「ネットからリアルへ」と「リアルからネットへ」の2通りがあります。そして僕は、後者のほうが融合により早く行き着けるのではないかと考えたのです。というのも、リアルのビジネスを確立・拡大することは、ネットのそれに比べて圧倒的に時間と労力がかかるからです。
セブン-イレブンはいまや全国2万店舗の販売網を有していますが、ここへ行き着くまでに40年という歳月を要しています。Amazonは確かに急成長していますが、それはここ10年ほどのことなのです。リアルを基盤にネットへとビジネスを広げていくほうがスピーディに、ことが運ぶはずだと見ていました。
しかし、小売業界における過去の成功体験を持っている人・企業を変えていくのは、非常に大変なことでした。
「デジタルのことはわからない」という人が予想以上に多く、ネットと融合することの意義は一朝一夕には理解されなかったのです。加えて、重厚長大企業にありがちな企業体質も、オムニチャネル推進においては足かせになりました。
50歳を超えなければ会社における発言権がなく、若い人の意見を積極的に取り入れるようという風土も皆無でした。
また、これは仕方のないことではありますが、セブン&アイに入った途端、何かにつけて父を引き合いに出されるようになりました。何をやっても「父親のおかげでできること」と言いたがるわけです。そのほうが面白いですし、反対派の人にとっては自らを正当化する上で、これ以上効果的な素材はありません。