ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #09
人に会い、話を聞くことでこそ、ビジネスの構想は練られていく【サツドラ 富山浩樹、ニトリ 田岡敬】
「EZOCA」から始まったサツドラの差別化戦略
田岡 北海道内の提携店で使えるポイントカード「EZOCA(エゾカ)」は、とてもユニークだと思っています。どのような背景があってスタートしたのでしょうか。富山 我々はチェーンストアとして成長したいという思いを持っていますが、当時北海道の中だけで戦っていた我々に対して、一番のライバルであり、同じく本社を北海道に置くツルハドラッグは全国展開をしていて、ずっと大きな存在でした。そこにぶつかっていくためにどう差別化をするのか考えたとき、地域ならではの特色を出そうと、EZOCAの構想に行き着いたんです。
※ EZOCAの会員数は165万人にも上り、提携企業は100社を超えて、600店以上の店舗をつなぐ規模に成長している(2018年5月末)。北海道の人口は、約550万人であり、普及率は約30%になる。
田岡 具体的には、どのように差別化しようと考えられたのでしょうか。
富山 一つは、提携企業として地域の企業に狙いを定めたこと。ナショナルチェーンや個店はそれぞれTポイントカードやリクルートなどポイント提携を進めていましたが、地域ならではの中堅企業はほかの業界でもまだ残っていると考えたんです。
実は、TポイントやPontaから連携の提案をもらっていたので、もしこれを自分たちで取り組んだらどうなるのか話を聞きながら、シミュレーションしていたんです。
また、ポイントに加え、人と人、企業と企業がつながるという構想のもと、もともとあるコミュニティや同じものが好きな人同士の集まりなどを応援する「EZO CLUB(エゾクラブ)」もつくりました。
田岡 EZO CLUBでは、具体的にどのようなことをしているのですか。
富山 EZO CLUBマガジンという紙媒体を13万部ほど発行しているのですが、そこでコミュニティから情報発信できるようにしたんです。特に、集まりたい、発信したいという気持ちが強いママさんたちに喜ばれ、火がつきました。
EZO CLUBはツールとして捉え、それ自体でマネタイズをしなくても、EZO CLUBを好きになれば自然とEZOCA会員になったり、来店のきっかけにもなるだろうと割り切っています。
田岡 EZOCAやEZO CLUBは、言うなればビッグチャレンジですよね。不安はなかったのですか。
富山 不安はありませんでしたね。もともと自社ポイントを展開していて、それを顧客の8割が利用していたこともあり、私たちの顧客はポイントに対するリテラシーは高いと感じていました。EZOCAは自社ポイントをリプレースすることになるので一見リスクはありそうですが、大きく失敗することはないと思ったんです。
ただ、サッポロドラッグストアーのカードとしてではなく、EZOCAというまったく新しいブランドを使うということは大きな意思決定でした。
さまざまな業界に提携企業がある現在の姿をなりたい姿としてイメージしたときに、サッポロドラッグストアーのカードのままであれば、マーケティング活動は矮小化してしまい、その立ち位置は築けないと判断したんです。それで別会社を立ち上げるという、よりビジネスに広がりを生まれる形を選びました。