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マーケターズ・ロード 鈴木康弘 #05

セブン&アイ オムニチャネル戦略発表から退任までの1000日間と、独立【鈴木康弘】

前回の記事:
Amazonにどう対抗するか? 逆境を超えるアイデア力でEC事業を黒字化【デジタルシフトウェーブ 鈴木康弘】

オムニチャネル戦略発表、海外視察ツアー実施

 2014年にセブン&アイ・ホールディングス執行役員CIOに就任、2016年12月に退任するまでグループオムニチャネル戦略のリーダーを務めました。前回、お話ししたような苦労はありつつも、オムニチャネル戦略を実現することができたのは、トップを説得したことが大きかったように思います。

 当時、会長だった鈴木敏文は、「これからはネットの時代になる」ということははっきりと理解していましたが、80歳を超える高齢ということもあり、自らの実感としてそれを認識することはできていませんでした。

 しかし、オムニチャネル化について説明すると、すぐにその本質を見極め、ビジネスとしての可能性を確信していました。

 「御用聞きということか?」――僕がオムニチャネル化について説明したときに、ふと彼がつぶやいた言葉です。

 その通りなんですよね。昔は三河屋のサブちゃんがやってくれていたことを、今はPCやスマートフォンが叶えてくれている。鈴木敏文はやはり、経営者としては非常に優れた人だったと思います。

 得心した鈴木敏文は、「わかった、ネットとリアルの融合はお前に任せる」と一任してくれました。与えられた指示は、「関わる全ての会社のトップに自らが会って進めるように」ということだけ。こういうトップがいると、非常に楽ですね。オムニチャネル化を含むデジタルシフトを実現する上では、やはりトップが鍵になると思うのです。



 ソフトバンクの孫(正義)さんのように、トップが全てわかっているのなら、もちろんそれが一番良いでしょう。しかし、わからないのなら、わかるナンバー2を連れてくる必要がある。その2人があうんの呼吸で動かなければ、上手くいきません。

 その点、サラリーマン型の社長というのはデジタルシフトの障壁になりがちです。周囲を蹴落としながら上り詰めてきた経緯があるので、周りに弱みを見せたら終わりだと思っている節が強い。新しいことというのは、得てして弱みになりがちですから、「新しいことはやらない」という消極的な選択がとられることが多いのです。

 トップを説得し、経営会議でも承認を得たあと、セブン&アイ・ホールディングスグループの全社長と幹部50名ほどで、アメリカ小売業界を視察しました。もともと一人でゆっくり行ってこようと思っていたのですが、それを聞きつけた前会長の指示で、大所帯での視察となりました。

 百貨店・メイシーズの幹部と懇談の場を持ったり、同社のオムニチャネル戦略を実際に目の当たりにしたり、全米小売業協会の年次総会でオムニチャネルの先進事例を見聞きしたりといった行程。まさに「百聞は一見に如かず」で、この経験によって、オムニチャネルやデジタルシフトに対する社内の理解はかなり深まり、刺激にもなったようでした。

 視察から帰国すると、いよいよプロジェクトがスタートしました。さまざまな外部パートナーを招き、社内外メンバーで構成されるプロジェクトチームを発足。2015年11月に「オムニ7」をスタートするに至りました。

 セブン&アイグループのコンビニ、スーパー、百貨店で取り扱う商品を、会社の垣根を越えてオンラインで販売するようになり、裏側ではグループ各社で分断されていた顧客データベースと商品データベースを統合していきました。

 仕組みづくりを着実に進めつつ、プロジェクトが滞りなく進行できるよう組織体制の整備も工夫しました。例えば、当初は僕が一人で抱えてしまっていた「戦略を考える」「戦略を決める」という2つの権限のうち、後者をグループ主要会社の社長をステアリングコミッテッィとして毎週集め、そのリーダーを一番理解が深かった百貨店の社長に努めてもらいました。

 新しいことをしていると、知らず知らずのうちに妬まれ、横やりが入るのが世の常……そうならないよう、いろいろ苦労しましたが。
 

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