自由の毒味 #03

広告代理店とクライアントとの新しい関係性の模索、「共創」というスタイル

受発注の関係性に関わらず、全員が幸せになるゴールはひとつ

 言うまでもなく、受発注の関係性や所属している部門などに関わらず、全員のゴールは同じです。例えばパフォーマンス型広告で考えてみると、「クライアントの求めるパフォーマンス指標をクリアするクリエイティブを多く制作・配信する」というゴールを実現すれば、広告主はもちろんハッピーになります。

 そして、結果として広告予算の増加やプロジェクトの継続につながるため、広告会社側もハッピーになります。また、パートナーである広告メディアや制作プロダクション、および営業やクリエイティブといった職種も問わず、全員ハッピーを享受できます。

 つまり、プロジェクトに関わる全員が共通のゴールを実現するために役割を担い「共創」し、成功したときは全員で喜び、失敗したときには全員で反省するというスタンスが、日々難しくなる事業課題やマーケティング課題を解決する上で重要だと考えています。

 ちなみに私は、セプテーニ時代に「#全員クリエイター」というスローガンを掲げることで、クリエイティブ職だけでなく、メディア運用コンサルタントやアカウントプランナー(営業)などのスタッフも全員で、広告クリエイティブに対する意識を高めてきました。
 
 

「共創」を推進するためのファシリテーション手法

 このように「共創」が必要になる中で、私はワークショップを中心に、ファシリテーション(集団による問題解決やアイディア創造の支援・促進)型のソリューションを開発してきました。

 そのひとつがアイディア共創型ワークショップ「Cro-Session(クロセッション)」です。

 「複数の異なる立場のプレイヤーが集まり発想する場」という意味を込めCrossroadとSessionの組み合わせから名付けました。例えば、広告クリエイティブを発想したい場合、「WHO?(ターゲットは具体的にどんな人?)・WHAT?(その人に刺さる訴求/ポジショニングは?)・HOW?(どのようなクリエイティブ表現にする?)」という3つの問いに取り組みながら、複数の新しいクリエイティブをカタチにしていきます。

 専門性が求められる表現を発想するパートでも、限られた人がコミットするのではなく、Pinterestなどを活用して、アウトプットイメージを全体で共有し、職種や経験に関わらず「全員」が当事者として参加して「自分が創った」という意識を持ってもらうことを大切にしています。

 そうすることで、斬新なアイディアを発想しやすくなるだけでなく、取り組みに対するチャレンジについても意思決定しやすくなるというメリットを感じています。
 

 もうひとつ「共創」のためのワークショップ手法として、「LEGO® SERIOUS PLAY®」も紹介したいと思います。レゴ® シリアスプレイ®は、専門のファシリテーターのもと、レゴ・ブロックを使用してワークショップ形式で実施する会議技法、コミュニケーション技法、また問題解決の技法と言えます。

 従来の形式的な会議とは異なり、参加者一人ひとりが自らが創った三次元のモデルを通して、グループディスカッションや知識の共有、問題解決と意思決定を行います。

 サインコサインでは、企業ブランディング支援の一環としてコア・バリューの言語化を支援することも多いのですが、コア・バリューを言語化するにあたって、まずは実際にその企業ではたらくメンバーに対して「仕事の価値観発見ワークショップ by LEGO® SERIOUS PLAY®」を開催します。

 そして、そこからコア・バリューを言語化するための材料を導き出すようにしています。ワークショップを通して、メンバー自ら当事者として考えてもらうことで最終的に完成したワードへの納得感が得られやすくなります。
 
LEGO®で共創したある企業の5年後の姿
 また、ワークショップで得た材料をもとに言語化を進めていく際にも、「共創」の手法を用いることで、より短い時間で納得感のある成果物にたどり着けるようにしています。一般的なコピーライターの場合、事前に複数案を用意して選んでもらう、という進め方が多いと思いますが、私たちの場合は意思決定者を含む最少人数での壁打ちセッションを通じて、アウトプットの精度を高めていきます。

 このセッションの進め方については、私自身のタイムチケットでの経験が基になっており、今後はセッション内容に関しても仕組みやノウハウを体系化していきたいと考えています。
 

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録