TOP PLAYER INTERVIEW
大学ラグビーでV10の達成に導いた岩出雅之前監督、ビジネスで勝つには運を引き寄せる、運・根・鈍(うんこんどん)で、自分を整える
運命の運、根気の根、鈍いの鈍、“運根鈍(うんこんどん)”
田中 これまでのご経歴の中で、ラグビーを指導することができなかった期間があったとお聞きしました。その間、なぜ気持ちは腐らなかったでしょうか。
田中 安人氏
岩出 腐らなかった理由は、学生時代には味わえなかった現場での学びや人との出会いが多くあったからですね。学生時代から教師を目指し、大学卒業後に生まれ育った和歌山で教師をしたかったのですが、募集がなかったため、滋賀県にご縁がありお世話になりました。最初の赴任先は、学校ではなく県の公園の管理事務所でした。その後、校内暴力で荒れていた中学校で野球部の担当を受け持ち、次に赴任した高校では、バスケットボール部の監督、そして、県の教育委員会などの経験を経て、高校教員としてラグビー部の指導者になれるまでは10年かかりました。正直、なかなか自分の思い通りの人生は送れませんでしたが、そんなときでも本当に魅力的な人ばかりと出会うことができました。
そのときに出会った教員仲間や上司は、教員ひとりひとりにうまく自由度を持たせて力を発揮させてくれました。苦しいとき、困っているときはすっと寄り添ってくれる理想的な人ばかりでした。そんな理想的な上司とそれを支える仲間たちに出会い、私はすごく幸せな時間を過ごせて幸せでした。魅力的な活動や魅力的な人との出会いは宝ですし、関係性や考え方などを豊かにしてくれました。とてもついていました、いい運を持ち合わせることができました。
田中 岩出さんは人に焦点を当て、人が幸せになるための行動を当たり前のようにしていますよね。しかし、なかなかそうはできない人もいると思いますが、そんな人たちが明日からでも、これをやったら階段を一段登れるみたいなことは、ありますか?
岩出 運命の「運」、根気の「根」、鈍いの「鈍」で“運根鈍(うんこんどん)”という言葉が大事だと思います。最初から幸せな人はいませんが、不幸な人もいません。ただ、そう考える人がいるだけなんです。結果ではなく、そう思ったときから自分の心や考え方の状態は変わります。運は与えられるものではなく、自分で掴んでいくものだと思うので、掴んでいくためにさまざまな行動といろいろな人と出会ってお付き合いをする。
そのときにネガティブな自分、ネガティブな考え方ではよい行動もよい出会いも生まれません。相手にとってもよい関係にならないのでは、人は近づいてこないですよね。運命を大きく変える選択を選ばなくても、ポジティブかネガティブか小さな選択は変えていけます。自分自身は、ついているという考え方や、ありがとうという感謝の気持ちが大切です。
「ルビンの壺の絵」ってわかりますか? 顔に見えるか、人に見えるか、それとも壁に見えるかという絵です。それと同じように、幸福も不幸も考え方次第です。運を自分で整えて、つかむ前にまず整えていきます。
繊細に物事を見ないといけないこともあれば、鈍臭く、たくましく生きていくことも必要だと思います。それから、根気がなくてさまざまなことを壊してしまうことはあるので、何事にも根気が必要です。プロフェッショナルな人は裏でたくさん努力をしていますが、それを楽しいと思えるか、楽しいと思えないかは考え方次第ですね。