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大学ラグビーでV10の達成に導いた岩出雅之前監督、ビジネスで勝つには運を引き寄せる、運・根・鈍(うんこんどん)で、自分を整える

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常勝集団を形成した帝京大学ラグビー部の岩出雅之前監督「人を動かすには、自分が変わるのが鉄則」
  「常勝集団」で有名な帝京大学ラグビー部を育てあげた岩出雅之氏。大学選手権で9連覇を達成し、2022年1月には、ラグビー大学選手権で優勝し、前人未踏のV10を達成しました。現在は、同大学スポーツ局長・スポーツ医科学センター教授を務め、5月に著書『逆境を楽しむ力 心の琴線にアプローチする岩出式「人を動かす心理術」の極意』(日経BP)を発売。そんな強い組織をつくり続けてきた秘訣とチームを率いてきた同氏の心理的マネジメントは、部活動だけではなく、ビジネスの世界でも役立つことばかりだと注目されています。そんな同氏と、かつて帝京大学ラグビー部に所属し、現在グリッドCEO、吉野家CMOを務める田中安人氏の対談をお届けします。後半では、マーケティングでも注目されているファンを形成する方法や明日からでも仕事で応用することができる運を引きつけるマインド、よいリーダーの条件について迫りました。

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利他が他人の幸せをつくり、自分も幸せになることでファンになる


田中 岩出さんは誰もやったことがないことにチャレンジしていますが、怖くないですか。

岩出 怖いか怖くないかというより、それが必要だと思うので、行動しました。業界の常識は非常識という発想は、持っていましたね。しかし、ただ勝つためだけではなく、学生たちの今の充実、未来の充実というふうに学生たちの幸せを広げていくと、人はそこに集まってくるし、エネルギーを出すんですよ。その充実感が結果的に勝利につながります。それは今のスポーツ局でも、企業でも同じで、学内のスポーツを強くしましょうというのではなく、学内に集う多くの方たちの充実感や幸せをつくっていきましょう、そこに向かってエネルギーや知恵を出していきましょうと考えています。そのためスポーツはツールのひとつにすぎません。
    
帝京大学スポーツ局長、スポーツ医科学センター教授
岩出 雅之氏

帝京大学でのキャンパスライフがさまざまな活動やスポーツを通して、経験や出会いの場、活動の場となり繋がりあえるキャンパスライフに高めていきたい。大学生活が社会の中の幸せな存在のひとつになっていくことを目指しています。

田中 仕事をしているとどうしても、目先の数字や忙しさに追われ、利他の領域にはなかなか行き着けないという人が多いと思います。岩出さんはどのような経験を経て、その領域にたどり着いたのでしょうか。

岩出 人間は生理的欲求や安全欲求があり、それらが満たされて次の欲求である社会的欲求や承認欲求を満たしたいと思う生き物です。でも、それが満足していない人はいつまでもそこにとどまっているんですよ。まして自己向上や悟りの世界には辿りつきません。自分の可能性に挑戦しようという心理には、土台となる安全欲求や社会的欲求を得てから上がるのだと思います。欲求の階段を登りながら、利己から利他の心へ自身を導いていく。利他は他人の幸せだけでなく、自分の幸せも作ってくれるので、すぐに成果がなくても充実していくはずです。

私はこれまでにいくつかの逆境がありましたが、幸いにして何とか乗り越えることができました。充実感も上がっています。それは無知の知を、少しずつ自分なりに解決してきた成果が出てきたからだと思います。その無知の一番が、利己より利他の大切さではないかと思います。上に立つ経営者やマネージャーは、利他の心をうまく加味して企業理念や組織の中にしっかりと組むこむことで、会社の中の1人の人間として幸せが与えられると思います。

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