マーケターズ・ロード 富永朋信 #01
元ドミノ・ピザ CMO 富永朋信氏がイトーヨーカ堂に入社 「小売業におけるマーケティングの可能性を追求したい」
スターバックスの取り組みから学んだこと
以前、元スターバックスの長見さん(元スターバックスコーヒージャパン デジタルマーケティング部 部長 長見明氏)と話したときに、すごく良いなと思ったことがあります。スタバのアルバイト(編集部注:スターバックスでは「パートナー」と呼ぶ)は、最初の1週間「スタバ大学」で研修を受けて、次の1週間は店頭でレジの操作と商品の略称を覚えるそうです。
最初は上手くできなくても、店長を筆頭に周りのスタッフが、とにかく新人アルバイトを励ますのだそう。そして、本当に大事なのはそのあとです。店頭実習を終える頃、先輩スタッフが新人アルバイトに尋ねます。
「仕事はだいたい覚えられた? そろそろ好きなメニューができたんじゃない?」
そして、そのメニューをお客さんに勧めてみるように促すのです。勧めてみたところで無視されるかもしれませんが、もしかすると買ってくれるかもしれない。そして、買ってくれた人が「美味しかったよ、ありがとう」と声をかけてくれるかもしれない。
それがお客さんとスタッフとのポジティブな関係の起点となり、お客さんに奉仕する喜びをスタッフが覚えるきっかけになるのです。
重要なのは、スタバがそれをシステムとして確立していること。
世の中の多くの小売業は「顧客にこのような体験を提供しよう」という基準を持たず、それゆえ「どうすればその体験を実現できるか」という思考に至っていないかもしれません。
自分たちが提供すべき顧客体験を定義し、それを実現するための仕組みづくりをきちんとできれば、イトーヨーカ堂には、さらに成長の余地があると思います。