変革のカギを握るCxOの挑戦 #05
マーケティングから人事領域に挑戦、みずほ 執行役員の秋田夏実氏の新時代キャリア論
マーケティングの神様と出会い、マーケティングに興味を持つ
石戸 では、秋田さんがどのようなキャリアを歩み、現在の考えに行き着いたのか詳しく聞いていきたいと思います。前職までのご経歴を教えてください。
石戸 亮 氏
秋田 新卒で、日本のメガバンクに入社しました。その後、MBAを取得するため、米・ノースウェスタン大学 ケロッグ経営大学院へ私費で留学しました。そのときにそれまで全く縁のなかったマーケティングという分野に出会いました。
マーケティングを生業としている人ならご存知のように、ケロッグはマーケティングの神様と呼ばれるフィリップ・コトラー教授が教鞭を執っていることで知られるビジネススクールです。その中で、単位には関係のない特別授業として、スマホが普及する前に、スマホのはしりのような端末の使いこなし方を2年生のティーチングアシスタント(TA)が教えてくれる授業がありました。
そのとき、私の隣に高齢の男性が座っていたのですが、その人はやたらと質問して、キラキラと目を輝かせながら話を聞いていました。「この人は一体、誰なのだろう」と思っていたら、それがかの有名なコトラー教授でした。それが、私の留学経験の中で、ものすごく衝撃でしたね。
というのも当時、マーケティングに興味のなかった私ですら、コトラー教授のお名前は知っていました。それほど高名な方が、当時60代後半になっても、なお勉強し続けている。しかも、学生から学んでいたわけです。今なお、先生がマーケティングを1.0、2.0、3.0…とどんどん進化させていく根本には、この飽くなき好奇心、そして成長し続けようというマインドがあるのだと感動した経験があります。
石戸 教鞭を執る立場なのに、すごいですね。
秋田 そうなんです。この経験がきっかけとなってマーケティング領域に興味をもち、マーケティングを学ぶようになりました。
当時は、金融機関がマーケティングを意識し始めたばかりの時期でした。しかし、マーケターにとって、金融商品やサービスは消費財と違ってクリエイティブ制作における制約が非常に多いため、あまり魅力的な領域ではありませんでした。そのため、競合となる人材が少なかったので、逆に「金融×マーケティング」というポジショニングを専門領域にするのは面白いかもしれないと思いました。
そして帰国後、国内外の金融機関でマーケティングを軸足に置き、キャリアを重ねてきました。
石戸 なるほど。しかし、前職のアドビは金融領域とは異なりますよね。
秋田 アドビは、以前から仕事上でもプライベートでもソフトウェアを使用していました。個人としても好きなサービスのひとつで、そのご縁からチャンスをいただき入社を決めました。
アドビでは、マーケティングの枠を超え、副社長として日本の組織全体の運営に携わりました。そこでは、いかに社員のモチベーションやエンゲージメント、ウェルビーイングに貢献できるかに注力していました。それが、みずほでの仕事に繋がっています。