変革のカギを握るCxOの挑戦 #07

CHRO(最高人事責任者)とCDO(最高デジタル責任者)を兼務、稀有な人材はどう生まれのか?日揮ホールディングス 花田琢也

  パイオニア チーフ・デジタル・オフィサー(CDO)石戸亮氏がマーケティング・DX・CX領域で活躍するエグゼクティブにインタビューし、その人が実績を出している裏側にある考え方を解き明かしていく連載。第4回は、プラントのEPC(Engineering:設計、Procurement:調達、 Construction:建設)事業などを手掛ける事業会社を傘下に持つ日揮ホールディングスで、専務執行役員 CHRO・CDOを務める花田琢也氏が登場する。第1回では、全社の人事とデジタル率いるポジションができた背景と、入社してからさまざまな経験をしてきた経歴を中心に聞いた。
 

人事を中核におくことで誕生したCHROの花田氏


石戸 まずは、花田さんがどのように現在の役割を担うようになったのか、聞いていきたいと思います。もともと日揮ホールディングスには、CHRO(最高人事責任者)というポジションはあったのですか?
    
日揮ホールディングス
専務執行役員 Chief Human Resource Officer(CHRO)兼Chief Digital Officer(CDO)
花田 琢也 氏

花田 CHROもCDO(最高デジタル責任者)という肩書きもありませんでした。これだけ経営環境が変わってくると人財戦略もデジタル戦略も必ず経営と連動すべきであり、そういった意味では、人事部長だけでは全体の変革は推進できないと思います。企業の中にCHROのような機能は必要でしょう。

石戸 では、CHROもCDOも花田さんが1代目になるのですね。

花田 そうです。日揮グループでは各事業会社にCは付けていません。ホールディングスの中で組織全体を統括するようなポジションにのみCをつけています。ただ、私はCHRO とCDOですが、人事であればHRO(人事責任者)を、デジタルであればDO(デジタル責任者)を各事業会社に置いています。HROには各社の副社長を任命し、HROで構成されるHRO会議で決まったことを各社で迅速に浸透させていくのです。従って、私はHRO会議の纏め役でもあります。

石戸 C職を配置する日本企業は最近見るようになってきましたが、その中でCHROとCDOは最近になってといった印象です。かつそれを兼務されているのは非常に稀有だと思います。CHRO やCDOは組織の中で、どのように形成されたのですか?

花田 CHROについては、日揮グローバルのエンジニアリングセンターのプレジデントに就いていたときに、グループ全体を統括する人財の機能が必要であると考え、トップである代表取締役会長 Chief Executive Officer(CEO)の 佐藤雅之さんと代表取締役社長 Chief Operating Officer(COO)の石塚忠さんにCHROというポジションの設置を提言しました。

これからの時代は、必ず「人財」が重要になると思います。プラントのEPCを手掛ける事業会社は工場も研究所もなく、人しかいません。この人財をどのように育てていくのか、まさに経営戦略と連動した戦略人事をつくり実装させていく必要があると思います。そのためには、骨太な戦略を造る必要もあることから、私が自らCHROを担当すると申し入れました。

一方で、CDOの場合は、DXという世の中のトレンドもありますが、グループ全体に点在していたデジタル機能を中央集権的にひとつに束ねていく。グランドプランに代表される計画を立て、推進していこうとするとさまざまな役職の人が実在するので、全体をリードしていく象徴的なポジションが必要だという理由から、2018年に誕生しました。

石戸 人財やデジタルはとても重要ですが、会社としてセンターピンに置くことができる会社もいれば、できない会社もいますよね。

花田 そうなんですよ。エンジニアリング会社の場合、人事やデジタルはコアコンピタンスではなかったりします。たとえば、自動車の会社でいうと主役は車になるので、車をつくるエンジニアリングが重要となりますね。

ある意味では、さまざまな局面を経験した人間でないと、CHRO やCDOを務めるのは難しいのではないかと思います。私はたまたま、日揮(当時)に在籍しながらトヨタに出向したり、デジタル関連のビジネスを起業したり、アルジェリアの現地法人(JGCアルジェリア)でも社長を務めていました。社長業では、人事本部長のような経験ができたと思っています。やはり最終人事権は会社のトップにあるので、そこからどのように人財を育てるかというアイデアやフィロソフィー、ビジョンを持っていなければ、企業は成長しません。10年近い社長業を通して、人事としての重要な考え方の基盤を築くことができたと思います。

ちなみにデジタルに関しては、NTTと一緒にビジネスを起業した経験が鍵になっています。もともと土木技術者である私が、人事やデジタルのトップを担うことができているのは、やはりそのようなキャリアを積んできたからだと思います。

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