変革のカギを握るCxOの挑戦 #08

2030年のデジタル戦略をたった半年で描いた日揮ホールディングスの推進力とは?

 

CHROとして「Why」の部分を見える化する


石戸 CHROとしては、どのような取り組みをされてきたのでしょうか。

花田 人事部長時代に遡ると、コロナ禍になってからはストップしていますが、ラポール制度というものをスタートさせました。これは昭和でいう徒弟制度ですね。
   
ラポール制度

昔は、たとえば寮で同じ釜の飯を食う、同じ風呂に入るといった環境だったので、組織の中でも縦、横、斜めのつながりがありました。しかし、今の若い人はそうではなく、ひとつの部門にいると、横や斜めのつながりができにくい環境になっています。それで、ときには自分の部門のことしか知らずに辞めていってしまうんです。

そこで、昭和の徒弟制度のようなものをつくりたいと考えました。平成の時代を経て、現代でもうまくいっている例を考えてみると、宝塚がヒントになりました。そこから生まれたのがラポール制度です。これは、入社して数年の若手や新卒、これから入社する内定者を8つのグループに分け、人事部のマネージャー8人には後見人として面倒を見てもらい、そのグループ内でコミュニケーションを活性化させます。それによって縦、横、斜めのつながりをつくり、いろいろな情報に触れられるようにすることが目的でした。

石戸 その他の取り組みはありますか。

花田 これは開始したばかりで、まだ結果が出ていませんが、経営戦略と連動する人事戦略を進めていこうとしています。人財のポートフォリオ策定、人財の採用や育成戦略、グローバルの人事制度、退職者率低減を促進するリテンション戦略など、8つの重点プログラムを考えました。当然ですが、経営戦略が変われば人事戦略も変わり、人財のポートフォリオも変わります。そうすると、採用も育成も、グローバルの人事制度も変化します。日揮グループでは4~5%程度の離職率ですが、世間と同じように年々辞める人が増えているので戦略的な人事のための重点プログラムを設定し、2022年7月から始めました。

今年度いっぱいで、いわゆる仕組み造りをし、来年度からは人事が主体となって実装できるように進めています。「ITグランドプラン2030」と同じで、これも人事のみで考えると、いわゆる人事的な考えしか出てこないので、やはりユーザー側の視点でつくることが重要だと思います。ここでいうユーザーとは、事業系のエンジニアを指します。全部で8つのプログラムのうち、5つは事業系の人間がプログラムのリーダーを務め、残りの3つは人事の人間が進めています。そして、2023年に人事が主体となって実装したときにスピード感が出るように、チームには必ず人事の若手や中堅を入れるようにしています。

当然、仕上がった制度は事業系のエンジニアを中心にみんなで造ったのだから、しっかりと活かしていこうと促しています。社内のいろいろな制度はWhatであったり、それを押し込むHow toの部分にあたりますが、Whyの部分を共通認識として持っていないと、効果が出ないと思います。そのWhyの見える化が、今年度のCHROとしてのミッションですね。
     
対談中の花田氏(左)と石戸氏(右)

石戸 すごいスピード感で、実装まで持っていくんですね。

花田 そのうち取り巻く環境が変わってしまうので、いかにスピード感、アジリティをもって取り組めるかが重要なんですよ。そのアジリティをどのように上げていくのか。当然、気合だけでは動きません。会社の人事戦略・実行体制は、経営トップが最終意思決定者になるので、委員長は経営トップとなり、その下にHRO会議をつくりました。メンバーは、CHROの私と各社の副社長が担うHROで会議を進めます。このメンバーで決定していくとスピード感をもって決めることができるんです。

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