変革のカギを握るCxOの挑戦 #09
パーパスの実現と変革に必要なリーダーシップとは?日揮ホールディングス CHRO兼CDOの花田琢也氏が語る
「Why」を見極めることの重要性
花田 もうひとつのエピソードは、アルジェリアにいたときの話です。同国の産業発展に貢献しようと、現地の人に、日本の企業のさまざまな技術力や事業の話をしましたが、どうもピンと来ていない様子でした。なぜピンと来ていないのかと思い、過去に出向していたトヨタの教えに倣って、Whyを5回繰り返すことで本質を見極めようとしました。でも全然、本質が見えてこないんです。
そのとき、ちょうどT.レビットの「マーケティング論」を読んでいたのですが、その中に4分の1インチの電気ドリルを買いに来たお客さんの有名な話があります。店主はお客さんに向かって、陳列中の電気ドリルがいかに優れているかを話していますが、お客さんが本当に欲しいのはドリルではなく、4分の1インチの穴です。ここで店主が本当に聞かなければならないのは、開けたい穴がどのようなもので、誰がいくつ開けるのかで、そうすれば自ずとお客さんが一番欲しいものを提供できるはずです。
それを読んで、なるほどと納得しました。私もこの店主と同じで、自分の持ち球の話ばかりしていました。ここで重要なのは、アルジェリアの人が本当は何が欲しいのかを考えなければならなかったのです。日揮の例でいうと、プラントの発注をしていただけるお客さんが欲しいのは、決してプラントではなく、プラントから出てくるプロダクトです。それでいろいろな話をして結果、行き着いた答えが「人財教育」でした。
つまり、相手が何を求めているのかという「What」が分からないとき、「How to」から考えてしまうと絶対に「What」は見えません。しかし「Why」が見えるようになると、「What」は自ずと見えてきます。そうすれば自然と「How to」も見えます。だから、「Why」を見極めることが一番重要だと、この経験から学びました。