国境は地図の上にない、心の中にある #04

紙おむつ界の革命児「ムーニーマン」の開発秘話と、マーケティング思考の根本【元ユニ・チャーム 木村幸広】

 

「はかせるおむつムーニーマン」の誕生が、起死回生の一手に


 アシスタントを1年間経験し、アシスタントブランドマネージャーを2年、ブランドマネージャーを3年、マーケティングディレクターを2年経験しました。担当は、紙おむつのブランド「ムーニー」を擁するベビーカテゴリーでした。

 私がブランドマネージャーを務めた3年間の中で、最も大きかった出来事は世界初のパンツタイプオムツである「はかせるおむつムーニーマン」の発売です。ムーニーマンが発売された1992年頃、日本では赤ちゃんの数が長期減少傾向にあり、ベビー用品の競争が激しくなっていました。当時は、テープで留める形のおむつが主流でしたが、その市場は成熟し、品質レベルも非常に高くなっていました。そのため、小さな商品改良だけでは、お客さまは振り向いてくれず価格競争に陥るという状態でした。そんな状況を「ムーニーマン」は打破し、ユニ・チャームのベビーグループの中で起死回生の一手となりました。


引用:https://jp.moony.com/ja/products/mnm/mnm-mnmhaihai.html
 
 パンツタイプである「はかせるおむつムーニーマン」は、ある開発者が発案しました。当時、主流だったテープ型の紙おむつでは、赤ちゃんを寝かせなければ、交換できませんでした。でも、赤ちゃんはじっとしてくれません。ある日、開発者は家庭訪問でおむつ替えのときにじっとしてくれない赤ちゃんに悪戦苦闘しているお母さんの様子を見て、「赤ちゃんを立たせたまま、おむつを履かせることができれば、楽に交換できるのではないか」と発想したそうです。

 実際に、調査でお客さまにそのアイデアをぶつけてみたところ、「これはすごい!」という反応でした。その後、履かせるタイプのおむつを開発し発売すると、あっという間に日本でシェアナンバーワンの商品になりました。現在では、他社も含めておむつ商品の9割がパンツ型です。これはまさに、お客さまのインサイトを捉えたアイデアで市場を席巻した事例です。

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