国境は地図の上にない、心の中にある #06

体重が10キロ減るほど苦労。タイ市場攻略で、人生観を変えた成功体験【元ユニ・チャーム 木村幸広】

 

体重が激減するほど苦労したタイ、踏ん張れた本当の理由とは


 結局、タイには5年半ほど駐在しましたが、本当に大変でした。ストレスで体重が10kgも落ちました。日本に戻ったとき、役員から「絶対にどこか悪いから、病院に行ってきなさい」と言われたことも、今ではいい思い出です(笑)。
   
タイの工場で竣工式に出席する木村氏

 そうした苦しい状況でも踏ん張れた理由のひとつは、「ユニ・チャームの商品が絶対にお客さまにとって役に立つ商品だ」と信じていたことです。少なくとも目の前でトラブルを抱えているお母さんがいるのだから、それを何とかしてあげられるのではないかと、思っていました。実際に、サンプルを使ってもらった人から「値段は高いけれど、質は素晴らしいね」と言ってもらえたことが自信につながったのだと思います。

 また、社長から指名されエース人材として現地に送り出してもらったのだから、「絶対に成功させて期待に応えたい」と思っていたこともあります。販売代理店から転職してきてくれた営業責任者と毎日、「こうしたらどうか、これならいいかもしれない」など、少しずつ業務を改善しながら前進していけたことも、モチベーションになりました。そうこうしているうちに少しずつ販売量が増えていき、結果的に心が折れずに済みました。



 実は、タイに家族を呼んだことも大きな転機になったと思います。最初は、赴任の期間ずっと単身赴任でがんばろうと思っていました。ちょうど上の子どもが中高一貫校に入学したばかり、下の子供が小学校卒業前だったので家族帯同は無理だと思っていたんです。しかし初めての海外赴任でかつタフな毎日で精神的にも限界で、一時的帰国の時に妻と子どもたちに本音を吐露したところ、2つ返事で「行ってもいいよ」と言ってもらえたんです。うれしかった。家族が現地に来てくれたことで仕事に充足感が生まれ、精神的にも落ち着きました。何せ日本には出張で行って、家族がいるタイに帰国する生活になったのですから。当時、一緒にタイへ行くことを決断してくれた家族には、感謝しかありません。

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