変革のカギを握るCxOの挑戦 #13

パーパスやバリューを刷新したUCCグループ、経営戦略と海外ビジネスの裏側に迫る【UCC上島珈琲 副社長 里見陵氏】

 

グローバルの視点を取り入れて決定したパーパス


石戸 実際にパーパスやバリューなどを刷新して、従業員の反応はどうですか。

里見 かなり良い感触を持っています。従業員にしっくりくるかどうかを意識してつくりましたし、浸透策も積極的に実施しています。たとえば、約530人のパーパスアンバサダーを設置した上で彼らを通じて個人としてのパーパスと会社としてのパーパスの重なる部分を対話する機会を設けるなどしています。とはいえすぐに浸透するものではなく相応の時間は必要と考えています。また社外でも近いステークホルダーの方々には経緯を含めてパーパス・バリュー・コーポレートメッセージを詳しく説明する機会なども設けています。

石戸 パーパスやバリューなどは、どれくらいの時間とプロセスを経て決めたのですか。

里見 基本的には経営陣と会話をしながら、約10カ月かけてつくりました。検討チームは、コピーライターを含めた3~4人の少人数で、その中で私がたたき台をつくり議論を深めていきました。コロナ禍の直後から、経営陣をグローバルなメンバーに変更したので、欧州やアジアなど言葉や文化の異なるさまざまな目線からも意見をもらいました。パーパスについては検討チームでもさまざまな案を出したのですがうまく合意に至らず、最終的に欧州チームが提案した「より良い世界のために、コーヒーの力を解き放つ。Unlocking the power of coffee for a better world.」が採用されました。
  
UCCグループで扱っているさまざまなコーヒー豆

石戸 経営陣をグローバルに変更したというのは、海外出身の人が経営に加わったということですか。

里見 はい、欧州やアジアのトップがグループの経営に加わったということですね。たとえば、グループでは欧州のビジネスが全体の2割強を占めるのですが、英国出身の欧州事業ヘッドがホールディングスの役員になりました。また、アジア事業の統括拠点はシンガポールにあり、そちらのヘッドも役員に加わりました。

石戸 グローバルで多様性のある経営になっているのですね。パーパスの決め方は会社によって異なりますが、オーナーの意向が強く反映されたというより、最初は少人数で原案を出し、いろいろな人が想いを肉付けしていくという形だったのですね。

里見 そうなんです。CEOは自分でどんどん意見するというよりも、横で過程を見守っている感じでしたね。ちなみに、パーパスと並んで重要なバリューは、私がつくった原案をもとに最終形になりました。ここでも、日本と海外の言葉のニュアンスの違いには苦労しましたが、さまざまな人の意見を聞きながら完成できました。
  
UCC上島珈琲の旧東京本部ショールームにて対談中の石戸氏(左)と里見氏(右)

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