マーケターズ・ロード 富永朋信 #05

日本コカ・コーラを辞めて、小売業のマーケターを志した理由【イトーヨーカ堂 富永朋信】

自販機にメディアとしての価値を見出す

 例えば、「初期の認知は、テレビの情報番組で第三者に語らせるPR的アプローチで獲得し、そのあとにテレビCMを投下して興味を形成する」というプランでは、どちらも「プラットフォーム」としてはテレビを使っていますが、「フォーマット」はPR/CMという異なる2つを使い分けていることになります。

 それに気づいたきっかけが、先ほど話に出た自販機のシャッター広告です。本来は街頭看板になり得ない自販機というプラットフォームを、街頭看板というフォーマットで機能させることで、一定の効果を得られるということを体感したのです。

 自販機は、放っておいたら“街の風景”として見過ごされてしまうような非常にパッシブなメディア・タッチポイントですが、ちょっとしたギミックを加えることで、メディアとしての注目度は全く違うものになる。



 元々はコールトゥアクションのためのメディア・タッチポイントだったものが、認知のためのメディア・タッチポイントとして機能し、それによってコールトゥアクションとしての機能もさらに高まっていくというシナリオを確立させたのです。
 

ソラーレで他部門との折衝を多く経験

 その後に、BATを去り、ソラーレホテルズアンドリゾーツにヘッド・オブ・マーケティングとして入社。約20人のチームを率いる責任者となりました。

 BATと同様、店頭マーケティングの要素が強いものの、ホテルはプロパティを保有し、そこで多くの人が働くことでサービスを提供する「体験価値提供の場」としての要素が小売業のマーケティングと近かったと思います。

 ソラーレに勤務したのは1年ほど。その間、CRMや、アライアンスプロモーションによる集客、ブランドガイドラインの策定、MICEを含む宿泊商品の開発などを手がけました。

 ヘッド・オブ・マーケティングという立場柄、他部門との折衝を多く経験したことが、ソラーレで得たもののひとつです。マーケティングからの提案に対し、「前例がない!」などと反発されることも多かったのですが、「いやいや、そう言わずに…」と、それこそ“靴を舐める”ような気持ちで説得しましたね。

 そうして、ついに小売業のマーケティングに携わるチャンスを得ました。西友に、ヘッド・オブ・マーケティングとして招かれることになったのです。

<次回、「『ここに、富永朋信あり』 西友でのKY(価格安く)キャンペーン成功の裏側」は20日公開です。>
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