国境は地図の上にない、心の中にある #08

ユニ・チャームが10年でインド市場を黒字化させた攻略の秘訣とは

前回の記事:
インド市場の開拓、その裏側を元ユニ・チャーム 木村氏が語る
  ユニ・チャームで30年以上に渡りマーケティングに携わり、タイ法人及びインド法人の代表などを歴任し、同社の海外の重要拠点の黒字化に成功した経験をもつ木村幸広氏。この連載では、世界で活躍するグローバルマーケターになるまでの軌跡を辿りながら、グローバルで成功する要件と、マーケティングに重要な消費者視点などを紐解いていく。第8回は、木村氏のキャリアの中で最も長く過ごしたインドに赴任したときのエピソードを紹介。現地の従業員といい関係性を築く方法や、10年間かけて黒字化を達成した苦労などを話す。
 

日本人でも、インド人でも、人間はみんな同じ


 インドでは、約10年を過ごしました。インド人は個人主義で自己主張が強いとよく言われますが、実際に付き合ってみると、まさにその通りでした。とにかく自分をどんどん主張し、人を押しのけてでも前に出ようとするカルチャーがあります。なぜそのような国民性なのかは、現地で暮らしてみて初めて理解できました。

 インドには13億人が暮らしており、どこに行ってもたくさんの人がいます。そうすると、自己主張をしなければ、埋もれてしまい自分の存在はないのと同じです。学校でも、ディベートで相手を打ち負かす方法や話し方を教え、英語を使うときは相手の知らない単語を早口で言えと教えられます。自分の生きる道を自ら勝ち取るようにと育てられるのです。その上、インドには日本のような義務教育がなく、身分や貧富の格差がまだまだ大きいという現実があります。もし私もそうした環境で生きていくのであれば、同じように行動するだろうと思います。



 その一方で、インド人は「義理と人情と浪花節」も持ち合わせています。私は2008年10月1日の業務開始に合わせて、9月29日に現地へ赴任しました。実はその1日前の9月28日が私の誕生日でした。現地に到着した29日、これから一緒に働くことになっていたインド人から自宅に招かれ、誕生日を祝ってもらったのです。

 彼もインド人らしい個人主義者で自己主張も強い性格ですが、これから働く人を出会った初日に自宅に招き入れ、誕生日を祝う側面も持ち合わせています。私はそれを目の当たりにしたとき「人間はみな同じだ」と強く感じました。

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