マーケターズ・ロード 富永朋信 #06
「ここに、富永朋信あり」 西友でのKY(価格安く)キャンペーン成功の裏側
ウォルマートのガイダンスに従い、マーケティング予算を圧縮
低価格を訴求するコミュニケーションは、その後も続き、2011年に実施した「サゲリク」は、価格認知をさらに強化するとともに、価格とお客さまの感情を結びつけることを狙ったキャンペーンでした。値下げしてほしい商品をTwitterで募り、100票集まったものは実際に値下げを検討する。値決めのプロセスにお客さまに参加してもらうことで、お客さまと価格との間に情緒的なつながりをつくろうという、非常にチャレンジングな実験でした。
メーカーの許可を取らずにスタートしたもので、MDには「100票集まったら御社の商品を値下げしなければいけないので、安くしてください」という半ば強迫じみた交渉をしてもらうことになりました(笑)。
こうしたさまざまな企画を、宣伝広告費を縮小し、メディア間の投資配分を調整しながら展開していきました。
何しろ多額の予算がありましたから、折込チラシを間引いて、そのぶん新聞広告やテレビCMに振り分けるというのは、そう難しいことではないはずでした。
しかしウォルマートのガイダンスでは、「マーケティング予算は、総売上に対していくら」という明確な基準が示されており、早急に予算を圧縮する必要に迫られていました。最終的にはそこまで絞り込みましたが、その大幅な予算縮小の中でマス広告やWebの予算を捻出するのは、力のいる仕事でしたね。
ちなみに、特売チラシという「フォーマット」はやめたものの、折込チラシというメディア自体は活用し続けています。特売を思わせる従来の“チラシ然”とした表現は避けながら、チラシに見えない折込広告をつくって、消費者とコミュニケーションができないだろうかと考え、新しい「フォーマット」として、英字新聞風の新しいメディア「KY TIMES 365」を開発しました。
新聞は購読数が落ちているとはいえ、数多くの世帯の手元まで確実に届く稀有なメディアです。それを使わない手はないでしょう。
商品の裏側にあるストーリーや、安さの秘訣を伝えるもので、テレビCMで打ち出している一風変わったメッセージの受け皿としての役割も果たしています。複数のメディアを組み合わせた、いわゆる統合マーケティングを実践していると言えます。