マーケターズ・ロード 富永朋信 #06

「ここに、富永朋信あり」 西友でのKY(価格安く)キャンペーン成功の裏側

一般的なリテールのマーケティング以上の経験をした

 価格認知を強化し、来店客数や売上の増加に貢献し続けたことで、社内からの信頼を徐々に得ることができ、「富永さんなら何とかしてくれるはず」と、社内各所から相談が寄せられるようになりました。

 特に、日用品、家電、家具といったカテゴリ毎のコミュニケーションについて相談されることが多かったですね。「西友ニトリあえずイケア♪」と歌うテレビCMも、そのなかで生まれた施策でした。一般的には商品部が担うことの多いプライベートブランド(「みなさまのお墨付き」)も、任せてもらっていました。

 商品部・マーケティング部・店舗運営部が月1回集まって、店頭のオプティマイズを考える「フィーチャープランミーティング」にも、マーケティング側の中心として参加していました。

 商品部が3カ月後のフィーチャー商品を提示して、マーケティング部が前月に聞いた2カ月後のフィーチャー商品のコミュニケーションプランを提示、店舗運営部が前月に聞いた2カ月後のコミュニケーションプランを基にお店づくりを提示する。

 こうして、チェーンストアとしてどんな商品をどうフィーチャーするかが決まっていくのです。そして、これを繰り返していくと、「店内でこんなふうに商品をフィーチャーすると、これくらい売上が上がる」というデータが蓄積されていき、不動産としての店舗の価値や、店舗をどうマネタイズしていくべきかということが見えてきます。



 そんなふうに、当初求められていた役割以上の役割を果たす中で、世の中における西友の存在感を高めることができたと自負していますし、社内におけるマーケティング部のプレゼンスも最高潮に高まりました。

 しかし、その状況は長く続かず、徐々にスポットライトがマーケティング部に当たらなくなっていったのです。

 そもそもリテールにおけるマーケティングって、相撲の番付でいうと「小結」くらいの立ち位置なんです。

 商品部が「横綱」で、店舗運営部が「大関」。成果を重ねて、自分も「大関」になったくらいの心持ちでいたのですが、EDLPとしてのポジションがおおよそ確立されると、「もう、マーケティングは十分」とみなされ、会社としてのフォーカスから外れてしまった。

 自分の中で「手は尽くした」という感覚もあり、8年間在籍した西友をあとにしました。

<最終回、「ドミノ・ピザや西友でマーケターとして成果を出せた背景には、“言語化”する力があった」は21日公開予定>
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