国境は地図の上にない、心の中にある #09

グローバル企業の寡占状態にあったインド・おむつ市場で、ユニ・チャームはどうシェアを伸ばしたのか?【元ユニ・チャーム 木村幸広】

 

企業名の「ユニ・チャーム」より、ブランド名の「マミーポコ」が先に浸透


 当時、インドではテレビを見る人がとても多く、テレビ広告は必須だと考えました。そこでパンツ型のおむつ『マミーポコパンツ』の登場や、履かせやすい商品であることなど、商品の特徴やベネフィットをしっかりと伝える広告をつくりました。

 続いて、売り場です。インドの薬局などの小売店は展示会のブースのように非常に小さなサイズで、店員さんがカウンター越しに1人で立って販売する形態です。さらに、インドの人の多くはまとめ買いをしないので、おむつを1枚ずつ販売しました。

 さらに、店頭で引っ掛けて陳列するなど、目につく場所に置いてもらえるような工夫もしました。そうすることで店頭に並んでいる商品を見て、お客さんが「これは何?」と店主に聞くわけです。質問された店主は、「これは新しいパンツ型のマミーポコパンツです」と返答すると、お客さんが「テレビCMで見た商品だ。まずは1枚使ってみよう」と試し買いをする流れになるんです。

屋外, 建物, 草, フロント が含まれている画像

自動的に生成された説明

 競合と同じテープ型のおむつを店頭に置いてもらおうとしても、店主はお客さんにすすめてくれません。でも、パンツ型のおむつは「インド初登場」という紹介ができますし、「すごく便利だね」と話題にもなります。そういったことを店主が理解してくれたことも大きかったと思います。

 また、インドではユニ・チャームという企業名はほとんど知られていなかったので、「マミーポコ」というブランドを理解してもらう活動を優先しました。

 実際インドに赴任しているとき、イミグレーション(空港の入国審査)で「どこの会社に勤めているの?」と聞かれて「ユニ・チャーム」と答えたところ、知らないと言われたんです。ただ、その人に「マミーポコは知ってる?」と聞くと、「それは知ってる!」と言っていました。これはテレビ広告や店頭の商品陳列などを工夫した結果であり、ブランドが認知されることの重要性を実感しました。

※後編に続く
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