国境は地図の上にない、心の中にある #10

元ユニ・チャーム グローバルマーケターの木村氏が語る「ブランド=お客さまに対する責任の宣言」

 

お客さまに対する責任を宣言することが「ブランド」


 私の中で「ブランド=お客さまに対する責任の宣言」だと定義しています。お客さまに何を果たし、何を提供するのか。それを「ブランド」という言葉に集約しています。

 ユニ・チャームの商品は、生活必需品であることは間違いありません。逆に言うと、消費者が困っていることや悩んでいること、まだ気がついてない葛藤を解決する商品です。『ソフィ』のブランドで展開している使い捨て生理用ナプキンを例にとると、ある意味、隠れた存在だと思います。でも実は、ものすごく重要な役割を果たしているというのがユニ・チャームの存在価値であり全社員のプライドなんです。その反面、サステナブルという側面で、使い捨て商品はどうなんだろうという疑問の声もあり、我々は事業を通してさまざまなことを考えてきました。

 たとえば、できる限り環境への影響が少ない素材を使うこともそのひとつです。紙おむつに使われているのは、北米の畑に植樹された針葉樹由来のパルプで、数十年おきに切る場所を決めているんです。ある場所で樹を切ったらそこに植樹をして、それから数十年間はその場所で樹を切りません。来年はここ、再来年はここを切りましょうと、完全な計画伐採を行なっています。



 自然を破壊しないように管理された状態を整えているものの、樹を切っていることは事実です。できる限り使用量を減らしたり、環境負荷が低いものを使ったりするなど、ユニ・チャームは環境への配慮を常に考えています。使い捨て商品には環境面の問題や課題が挙げられるときがありますが、一方で使い捨てであることで実現できる優れた衛生面の効果においては人類にとって大切な商品だとも思っています。

 2011年の東日本大震災直後、東北の被災者にユニ・チャームの紙おむつや生理用ナプキンを送り、非常に喜ばれました。なぜなら、シャンプーや石鹸を送っても水が出ないと使えませんが、紙おむつや生理用ナプキンは水がなくても使えて衛生状態が保てるからです。このようにユニ・チャームの商品は隠れた存在ではありますが、清潔や衛生を真剣に考えています。だからこそ、現在のポジションを獲得できたのだと思います。
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