変革のカギを握るCxOの挑戦 #14

金融からファッションへ。異色の経歴を持つZOZO廣瀬文慎COOが挑むファッションDX

 

ZOZOTOWNだけでない、第2、第3の事業


石戸 現在、ZOZOの事業はどのような状況にあるのでしょうか。

廣瀬 ZOZOTOWN事業は、コロナ禍によるEC化の追い風もあり、順調に推移しています。1年に1回以上の購入があるお客さまは、2021年度では1000万人以上に達しています。その中で、ファッションだけでなく、コスメやシューズといった新しいカテゴリも数年前からスタートしています。

一方で、我々はずっとZOZOTOWNの一本足打法で取り組んできているので、そこに新しく第2、第3の事業を打ち立てたいと考えています。過去にはプライベートブランドに挑戦したものの、うまく軌道に乗せることができずに止めてしまったということもありました。そのような経験も踏まえて、現在では3つの強化ポイントを対外的に発表しています。

ひとつ目は、「買う」以外のトラフィックも増やすことです。世の中や消費者でも「ファッションを“買う”ならZOZO」というイメージはだいぶ定着してきていると思いますが、さらにその前の段階として、「ファッション」を想起するときにZOZOが何か関わることができないかと考え、「ファッションの“こと”ならZOZO」というイメージを目指しています。

その中で、2022年12月に超パーソナルスタイリングサービスを提供するZOZO初のリアル店舗「niaulab by ZOZO(似合うラボ)」を表参道にオープンしました。そこでは、お客さまにスタイリングやヘアメイクを通した「似合う」を提案し、購入より前にZOZOを想起してもらうことにつなげたいと考えています。
  
ZOZOの事業について語る廣瀬氏

石戸 その取り組みは、名前もZOZOらしいユニークさがありますね。

廣瀬 はい、ありがとうございます。2つ目は、ファッション領域の生産支援で、プライベートブランドを以前に立ち上げたときのメンバーが発案した事業です。ZOZOTOWNで取り扱うブランド様の商品を最低1着から受注生産できれば、より幅広いお客さまのニーズにお応えできるのではという考えから、2022年9月から生産支援プラットフォーム「Made by ZOZO」をスタートしました。

これにより、自分に合うサイズが売り切れによって購入できないという現象がなくなります。また、ファッション業界は大量生産・大量廃棄が課題になっていますが、ブランド様にとっては売れ残りによる余剰在庫のリスクがなく、お客さまにとっては自分が購入した商品が後で値引きされることもなくなるというメリットがあります。

ファッション業界は、特に製造工程の上流に行けば行くほど、DX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいません。我々は提携している工場に注文情報が届く仕組みはもちろんのこと、製造過程も把握できる仕組みを整えています。そのような支援で、ファッション業界の上流のDXを進めているところです。

石戸 これは「niaulab」と異なり、ファッションの大量廃棄の削減に直接つながる取り組みですね。

廣瀬 3つ目は、技術ライセンスで海外に進出することです。ZOZOTOWNとして、Eコマースで何度か海外に挑戦したことはあるのですが、日本のブランドの知名度が海外ではあまり高くないため、展開が難しいという経験をしました。そこで、海外へはテクノロジー面で新たに攻めていこうと考えています。

たとえば、以前、全身を計測できる「ZOZOSUIT(ZOZOスーツ)」が話題になったと思うのですが、2020年に発表した新しい「ZOZOSUIT」では、その計測の精度がかなり向上しました。まずは、それを使ったフィットネス事業を昨年に米国でローンチしたところです。

石戸 それは、ZOZOTOWNの事業として運営しているのでしょうか。それとも、別の事業として、責任者やPLも分けているのでしょうか。

廣瀬 ZOZOTOWNの事業からは、ほぼ切り出しています。管掌役員も異なっていて、ひとつ目を代表取締役社長兼CEOの澤田宏太郎が、2つ目を私が、3つ目を取締役副社長兼CFOの栁澤がリードしています。

ただ、2つ目に関しては、OEMのように製造した商品を、結果的にZOZOTOWNで販売する流れになっているので、そこはつながっていますね。

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