「元書店員マーケター」オススメの一冊 #03

【書評】「トヨタ生産方式」こそ、企業のマーケティング担当者が学ぶべき(逸見 光次郎)

体験と言葉で、TPSの本質が語られる

 本書は、TPSのマニュアルではなく、多くの人の体験と言葉で、その本質が語られているのが魅力だ。

 大野氏、一番弟子の鈴村喜久男氏、その薫陶を受けた張富士夫氏、池渕浩介氏、続く世代の林南八氏、友山茂樹氏、二之夕裕美氏と、多くの人々がカイゼンし続けた際の実体験を読むことができる。

 誰もが現場にひとりで行き、最初は厄介者扱いされるが、現場の視点で考えてカイゼン提案をし、現場を助けた時点から仲間扱いされ、感謝されるのだ。
 
「トヨタ生産方式の導入はつねに壁に突き当たる(中略)悩んで悩み続けて(中略)もう一度やり直したら今度はうまくできた」
「悩むことで自らの改善力が上がっているわけです。大事なことは、悩むことなのです。トヨタ生産方式に必要なことは、本で学ぶ知識でもなければ、突出した能力でもありません。悩む力=悩力です。悩むことによって心の筋肉が鍛えられる。するとある日突然、できないと思ったことができるようになる」
「相手に答えを教えるのではありません。答えが出てくるのを待つ。それが僕らの仕事です」とは、友山氏の言葉。
 
「大野さんが部屋に入ってくると足がすくむ。膝が震える」とは池渕氏の言葉。
 その大野氏は、「褒めるという行為は相手を馬鹿にしている(中略)自分ができない事をやったらどうするのか。『その時は褒めるより、びっくりする』」と語る。

 私自身も事業会社の一員として、またコンサルタントとして仕事をするときに、これらの考え方をいつも頭に置いて取り組んでいる。

 ぜひ、この本を読んで、今日より明日、明日より明後日、より良い仕事をしてみたいと思いませんか。
 
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