国境は地図の上にない、心の中にある #11

ユニ・チャームのLTVは顧客が感じる「満足度の総和」、人口減少の日本で誕生した大人用おむつ「ライフリー」の秘話

 

お客さまの満足度の高さが利益


 実は発売前、リハビリパンツを出すと従来の大人用紙おむつの売上が下がるのではないかという議論が社内でありましたが、それを高原豪久社長が「明るい超高齢社会を実現するためには絶対必要だ!」と一蹴しました。「健康寿命を支える」というライフリーの事業理念があったのだと思います。そのお陰で、チームも迷いなく取り組むことができました。

「健康寿命を支える」という事業理念があれば、お客さまの支持をしっかりと得ることができますし、ブランドに対する信念もつくることができます。もちろん商品が売れて利益が出ることは重要ですが、お客さまに喜んで使ってもらうことによって初めて利益が出るのです。少し言い換えると、お客さまの満足度を高めた結果として利益をいただけるということになります。

 それが結果的にLTV(顧客生涯価値)に繋がるんです。LTVというと多くのマーケターは、企業に対して顧客ひとりが生涯でどれだけの利益を生んでくれるのかを考えますが、それは間違っていると思います。顧客にとっての満足度が高まることに対して対価をもらうので、LTVは企業ではなく顧客を基準に置くべきです。LTVは企業の利益ではなく、「顧客が感じる価値の総和」として追うべきです。

 ユニ・チャームでは、LTVのVを会社やブランドに対しての「満足度」だと思っています。ひとりの顧客からどのくらい利益を得ることができるかではなく、その顧客にとっての満足度でありLTVを上げることだと考えています。前提として、顧客がいることを忘れてはいけません。
 

変化する社会をリードした商品やプロジェクトの数々


 おむつ同様に、他の商品も時代とともに変化しています。ここからは、そうした商品やプロジェクトを紹介していきます。

 生理用品は以前よりも、堂々と話ができる時代になりましたが、数年前までは隠すべき商品という位置付けでした。それをなんとか変えたいと、ユニ・チャームのフェミニンケアチームが2021年3月の国際女性デーに合わせて「#NoBagForMe」プロジェクトを始めました。
  
ソフィNoBagForMe

「#NoBagForMe」とは、生理用品を購入するときの抵抗感をなくすことを目指すプロジェクトで、「No Bag For Me=私にバッグはいりません」という意味です。生理用品が隠れた商品であったときは、店のスタッフさんが生理用品のパッケージが見えないように店頭で紙袋(Bag)に包んで渡してくれていました。その状況を変えよう、生理用品を前向きに捉えよう、生理を特別視しすぎず、できる限り通常に近い状態で過ごしましょうという想いから、この運動を始めたのです。このように変化する社会をリードしていくこともユニ・チャームの事業理念のひとつです。

 もうひとつ近年、増えている低出生体重児用のおむつに関する事例です。低出生体重児にはお母さんのお腹の中ですやすや眠っているのと同じ状態に赤ちゃんを守ってあげることが必要で、交換時にも眠りを妨げないように特別設計の「ムーニー病産院用」を発売しています。

 また、子どもを保育園に預けるとき、それぞれの赤ちゃんのサイズに合わせたおむつを先生は履かせなくてはいけないため、母親は一つひとつのおむつに名前を書いて保育園に持っていく必要がありました。その手間をなくそうと、あらかじめ保育園にさまざまなサイズのおむつを置いておくサブスク「手ぶら登園®️」をBABY JOB 株式会社とのコラボで始めました。この取り組みは働くお母さんから好評で、導入を希望する保育園も増えています。

 それから、日本で唯一オムツの表面シートにオーガニックコットンを使ったおむつ「ムーニーナチュラル 無漂白」は、肌に優しいという特徴以外に、もうひとつお母さんのために工夫をしています。それは、毎日大変な思いをしているお母さんのために、赤ちゃんがおしっこをするとおむつに「ありがとう」の文字が浮かぶ工夫をしています。使っていただいたお母様方から「赤ちゃんが私に感謝してくれているようで嬉しい!」という声をいただいています。育児はかわいい赤ちゃんとの毎日が楽しい一方で大変なことも多く、ママ・パパは育児のご苦労を感謝される機会も少ない中「育児を応援しよう」というユニ・チャームの事業理念に則って生まれた商品です。

 それ以外の商品もお客さまの役に立ちたいという気持ちや、自分たちの活動を通じて実現したい社会を目指すという気持ちが組み合わさって生まれました。ここまで挙げた商品やプロジェクトは高齢化や少子化など、日本で起きているさまざまな課題を解決し、応援しようと生まれたものです。そして、同じような問題が遅かれ早かれ日本以外の他の国でも起きることになるので、グローバル展開も始まっています。
  
ムーニー病産院用

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