国境は地図の上にない、心の中にある #11

ユニ・チャームのLTVは顧客が感じる「満足度の総和」、人口減少の日本で誕生した大人用おむつ「ライフリー」の秘話

 

ユニ・チャームの経験に感謝して次のステージへ


 私のキャリアの話に戻すと、ユニ・チャームに入社してからの約38年間、国内で営業やマーケティングを経験し、海外駐在を経て全世界のグローバルマーケティングを担当してきました。その期間に世界の市場構造は大きく変化し、それに合わせたマーケティング組織を構築することで社内の人材の層に厚みができてきました。

 実際、一緒に仕事をしていた部下が海外の現地法人のトップを任されるケースが増えるようになり、そろそろ世代交代ができるタイミングだと感じていました。

 私はもともと定年を迎える60歳まではインドにいようと思っていましたし、役員を続けられるまで勤続するという選択肢もありました。一方で、60歳は次の人生を考えるタイミングだとも感じていました。

「人生100年時代」で自分の体が動き、気持ちも元気なうちに次に向けて行動を起こそうと決めました。しかし、長年お世話になったユニ・チャームに、次の就職先を決めてから会社を卒業することだけは絶対にしたくなかったので転職活動は一切せず、高原豪久社長に「ユニ・チャームを卒業します」とだけ伝えました。それが2021年12月のことです。

 高原豪久社長とは、ユニ・チャームを卒業してからやりたいことや、その後の組織体制などをじっくりと話すことができ、快く受け入れていただきました。また、最後に送別会も開いてもらって円満に卒業でき本当に感謝しています。

 卒業してから次に何をしようかと考えた結果、マーケティングのコンサルティング会社(木村グローバルマーケティング合同会社)を作り、これまでのマーケティングやタイやインドでの経営者の経験を活かして、さまざまな企業のビジネス課題を解決することを支援することを決めました。その事業の一つとしてアニマルヘルステックカンパニーA’ALDA Pte. Ltd,.(以下、アルダ)の最高マーケティング責任者(CMO)の役割もお受けすることを決めました。

 ユニ・チャーム時代に、ペット領域のマーケティングも管轄していた経験があり、ペットフードからペット用の「マナーウェア」と呼ばれる紙おむつなども手がけていました。「マナーウェア」は散歩中の排泄がマナー的に問題が多く、マナーウェアをペットにつけて散歩しましょうという新しい概念から生まれた商品です。このような経験を活かしながら、次のステージに進もうと決めてアルダに参画しました。
  
送別会のときの木村氏(左)
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