変革のカギを握るCxOの挑戦 #17

前期比26.6%増、破竹の勢いで伸長するYogiboのリテール×IT戦略【取締役 CFO 小猿 雄一氏】

 

ITの掛け算と徹底したブランディングで、Yogiboブランドを確立


石戸 Yogiboは現在、国内で約100店舗を展開するまでに成長しています。どのようにYogiboのブランドを確立していったのでしょうか。
 
小林製薬 執行役員CDO
石戸 亮 氏

サイバーエージェント入社、子会社2社の取締役を務め、Google Japanにおいて大手広告主のデジタルマーケティングを支援、イスラエル発のAIスタートアップ企業のデートラマでは日本市場参入を推進。セールスフォース・ドットコムによるデートラマ買収時には、日本市場におけるPMIをリード。2020年4月からパイオニアの全社CDOやカンパニーCMOとして非上場後の再成長期に従事。小林製薬では2021年よりデジタル戦略アドバイザーを務め、2023年より同社へ入社し、CDOとして全社のDX推進を牽引している。ノバセルの事業戦略アドバイザーも兼任。マーケターやIT企業、スタートアップ企業の集まる東京タワー近くの肉バル「Trim」のオーナー。趣味はキャンプ。


小猿 大きく2つのポイントがあります。ひとつは、当社の基盤であるウェブシャーク社がIT企業であったことです。リテール業界はまだまだアナログな部分が多いですが、当社はITの知識を有しており「リテール×IT」の組み合わせを実現し、業務効率を向上させることが出来ました。おそらく、この点が他社との差別化の要因となっています。
  
Yogibo Store 御堂筋本町店(画像提供/ Yogibo)

具体的には、需要予測にITを活用しています。重回帰分析(説明する変数が複数ある分析を指す)含め、予測システムはすべて自社で開発しました。ほかにも在庫管理や販売管理などのシステムも、基本的にすべて自社で構築しています。そうすることで、スピード感をもってITの導入を進めることができ、成長を促進する要因となったのではないかと考えています。もうひとつのポイントは、Yogiboブランディングの価値向上につながるアクションを継続して行ってきたことです。

石戸 価値向上につながるアクションとは、具体的にどのようなことですか。

小猿 たとえば、Yogiboの売上がまだまだ低かった時期に、ある卸会社から当社の年間売上と同額の商品を仕入れるという話がありました。ただ、その条件は卸値を通常の特別価格にすることでした。営業としては、喉から手が出るほど欲しい案件ですが、Yogiboブランドの価値向上を考えると、値下げはブランドを毀損しかねませんので、断りました。

石戸 でも、ほとんどのリテールでは、「安く売る」という動きがあります。なぜ値段を下げなくても売れるという自信があったのでしょうか。

小猿 売れるかどうかは、最終的にはお客様が判断するので、我々のあずかり知らぬところではあります。ただ、お客様に選んで頂けるようなブランドにしていくアクションが出来ているのは、代表の木村の天性だなと思います。

Yogiboという商品を見つけたのも、そもそも2000年前後に木村が大阪南港の輸入家具店でビーズソファに出会ったことがきっかけでした。そのときに、「今後このような商品が世の中に出てくると面白いだろう」と感じたようです。それから2~3年後に無印良品さんからビーズクッションが発売され、「人をダメにするクッション」としてブームになりました。しかし、木村が大阪南港で体験したビーズソファは、それとは少し違うものだったそうです。
 
 
Yogibo Max(ヨギボーマックス)(画像提供/ Yogibo)

その後、2014年に海外のECサイトで木村の記憶の中のビーズソファと似た商品を見つけ個人で購入(輸入)しました。それがYogiboでした。しかし当時、3万円の商品に対して7万円の送料がかかりました。これほど素晴らしい体験ができる商品にも関わらず、送料が高いと多くの人が体験できないことはもったいない、という思いから日本での販売ライセンスを買ったというのが始まりだったのです。この木村の体験と考えから、Yogiboブランドの価値を高めていくアクションをすれば多くの方にYogiboを受け入れていただけると思っています。

あと、値段を下げずとも売れるのが理想ですが、現預金が少ないなど困った状況だと理想とはかけ離れた、やりたくないアクションをしなくてはいけないこともあります。
この点、当社は石橋を叩いて渡るような堅実な経営を続けてきたことで、困った状況になかったことが重要なポイントのように思います。
  

石戸 社長である木村さんの原体験は、大きいですね。ちなみに、2000年頃に出会った最初のソファはYogiboではなかったのですか。

小猿 その頃は、まだYogiboは誕生していないので、違う商品だったようです。

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