ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #10

シリコンバレーのベンチャキャピタリスト 宮田拓弥が、日本企業に見出している価値と可能性【聞き手:ニトリ田岡敬】

マーケティングの可能性が広がる時代、挑戦しないのはもったいない

田岡 昨今のマーケティング、広告業界については、どのように感じていますか。

宮田 キーワードは、「消費者との距離が近づいた」ということだと考えています。テレビCMなどのようなマスに向かって広く展開する時代から、ソーシャルメディアを介して消費者と企業が直につながることができる時代になりました。

 日本は未だにマスメディアでの告知を前提にしたビジネスモデルが多いのですが、ダイレクトチャネルで取り組めるビジネスはたくさんあります。その成功のカギを担うのが、マーケティングでしょう。

 確実に勝てるのは、30~50%のシェアを持つ企業がいる数千億円規模の市場です。そういった市場は、ムダなマーケティングが行われていることが多く、少し安い価格を設定してダイレクトチャネルで斬り込んでいけば、100億円の売上はすぐにつくれます。

 商品力や人材ではなくプライシングとマーケティングで勝てるということは、すでに米国で証明されているんです。その点、日本はまだまだ勝てる市場があるという気がしています。

田岡 最近、気になっている分野はありますか。

宮田 まだ投資はしていませんが、一番気になっているのはバイオです。

田岡 この20年で盛り上がっている分野ですが、さらに大きく発展するのでしょうか。

宮田 はい、圧倒的に成長していくでしょう。ひとつはディープラーニングによって、情報を解析し、予測する能力が格段に向上しているのが理由です。もうひとつは、DNA自体の編集ができるため自由度が上がり、新薬やガンの治療法など、応用の可能性が大きく広がったことです。とはいえ、少しの勉強で投資判断ができる分野ではないため、真剣に取り組まなければと考えているところです。



田岡 そういった分野の情報は、どこから得ているのですか。

宮田 基本的には、周囲のVCとの会話などからですね。

田岡 やはり紙やWebなどのメディアからというよりも、直接ヒヤリングした情報を参考にする方が多いのでしょうか。

宮田 いえ、メディアも参考にします。ただ、僕の場合は英語のメディアですね。海外メディア日本版による翻訳記事もありますが、それでも日本語化されていない情報はたくさんあります。おそらく英語で発信されたニュースのうち10%程度しか翻訳されていない印象です。

田岡 10%程度では、点と点の情報がつながって、「connecting the dots」のように線や面になっていかないですよね。毎日どれくらいの時間をかけてニュースを読まれているのですか。

宮田 20~30分程度でしょうか。毎朝8時にジムに通っているのですが、ジムでのトレーニング中に一生懸命読んでいます。
 
編集部注:
「connecting the dots」とは、スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式での講演で、将来を見通して点と点を結ぶことはできないが、後から振り返った時に結びつけることができると自身の経験を通して語ったこと。

「先を見通して点をつなぐことはできない。振り返ってつなぐことしかできない。だから将来何らかの形で点がつながると信じることだ。何かを信じ続けることだ。直感、運命、人生、カルマ、その他何でも。この手法が私を裏切ったことは一度もなく、そして私の人生に大きな違いをもたらした」

ITmedia「スティーブ・ジョブズ氏の言葉を考えながら仕事をする:connecting the dots

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