変革のカギを握るCxOの挑戦 #19

社長が人気お笑いコンビのコントを実演? DXを推進する富士通の独特な仕組みづくり【執行役員 EVP・CDXO・CIO福田譲】

 

福田流の社内コミュニケーション改革


石戸 フジトラでは、具体的にどのような取り組みを行っているのですか。
 
小林製薬 執行役員CDOユニット ユニット長
石戸 亮 氏

 サイバーエージェント入社、子会社2社の取締役を務め、Google Japanにおいて大手広告主のデジタルマーケティングを支援、イスラエル発のAIスタートアップ企業のデートラマでは日本市場参入を推進。セールスフォース・ドットコムによるデートラマ買収時には、日本市場におけるPMIをリード。2020年4月からパイオニアの全社CDOやカンパニーCMOとして非上場後の再成長期に従事。小林製薬では2021年よりデジタル戦略アドバイザーを務め、2023年より同社へ入社し、CDOとして全社のDX推進を牽引している。ノバセルの事業戦略アドバイザーも兼任。マーケターやIT企業、スタートアップ企業の集まる東京タワー近くの肉バル「Trim」のオーナー。趣味はキャンプ。

福田 Agenda noteの読者であるマーケターの皆さんに向けて、フジトラがフォーカスしているコミュニケーションやカルチャー変革の視点で、1つ面白い例を紹介しましょう。「FujiTube」という社内向けの動画プラットフォームで、今までにないコミュニケーション手法で「社員にもっと会社を理解してもらおう」「自分の会社への関心を高めてもらおう」という狙いでスタートしました。たとえば、社員は自分の会社の定例の業績発表会見に関心を持ちにくいため、業績発表の記者会見を、より社員が関心や親近感を持ちやすいカタチに加工した動画を配信しています。
 
「富士通の社内情報発信変革活動ご紹介」として、Agenda note限定公開の動画。社内の情報伝達をもっと良くするために、YouTube風にアレンジした動画や、代表取締役社長 CEOの時田隆仁氏と取締役執行役員 SEVP CFOの磯部武司氏が、時折ボケとツッコミと笑い声を交えながら話が展開していく動画なども社内向けに発信している。

石戸 非常に面白い動画ですね(笑)。

福田 ラップ調に加工したり、お笑い調に加工して配信したり(笑)。代表取締役社長CEOである時田隆仁と取締役執行役員 SEVP CFOの磯部武司が、漫才形式で新しい中期経営計画を紹介しています。

石戸 とても面白いですね(笑)。社内でこのような取り組みをされていたとは、想像以上でした。どちらの企画も、よく社内で通りましたね。

福田 社長をはじめ、関係する役員やメンバーが応援してくれています。FujiTubeのメンバーには、社員の目線・視聴者目線で、とにかく好きなようにつくってほしいとお願いしています。私は社内改革には、マーケティングの視点が重要だと思っています。

社内変革は、「相手に変わってもらう」ことがポイントになります。まさにマーケティングです。たとえば、入社2年目のIR担当社員が、キャビンアテンダントによる機内アナウンスをイメージした語り口と構成で投資家向けに動画を作ったり。

最近ではFujiTubeにいろいろなチャンネルが立ち上がり、YouTuberならぬFujiTuberという社内の有名人も誕生しています。もしかしたら、社内では一部の役員よりも有名かもしれません。

営業部門のある女性社員は、「ときどきバーを借りて自分でスナックを開いて、そこで人と人とを繋げることが楽しい」と言うんです。そうであれば、それを会社でもすればいいという話になり、実際に彼女が「スナックまり」というバーを会社の活動として時々開いています。「心理的安全バー」として、経営層も含めたさまざまな社員がカジュアルに会話をし、その様子が社内向けにリアルタイムで放映されることもあります。
  

石戸 社員が積極的に取り組んでいることは、非常に大事ですね。どの出演者もエバンジェリストのような存在ですね。

一方で、このような取り組みを他社で真似しようと思っても、福田さんのようにうまく社内からタレントを見つけるのが難しそうです。

福田 私が「見つける」のではなく、社員に「好きなことをやろう」と呼びかけると、出てくるんです。本人たちの「好きなこと」が、実は会社や組織のためにもなる、ということは少なくありません。これらの活動を応援してあげることで、結果として会社や社員のマインドや組織風土が良くなるのであれば、これらは立派な「変革プロジェクト」です。

石戸 なるほど。「好きなことをやろう」と言われることで、今まで隠れていた才能から芽が出てくる。それを福田さんが育てているわけですね。

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